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消費フロンティアへの接近

  食べるラー油、スマートフォン、電動歯ブラシのポケットドルツ、美容家電のイオンスチーマー、ミラーレス一眼デジカメ、ランニングや山登りなどアウトドアスポーツのウェアやグッズなど、昨年のヒット商品は、「内食」「情報端末」「趣味」領域の、コンパクトなものだ。
内食頻度があがり、節約をかねてランチは手作り弁当、家飲みが増えている。掃除や洗濯などの家事も、道具や用途別の洗剤や商品を使って楽しむ。友達を家に招くことを念頭において、賃貸選びでは内装や設備を重視しインテリアに関心が高い。
  求めているのは、大きくて特別な贅沢よりも、ふだんのリアルな日常生活を楽しむために工夫して、そのためにお金を使う、内向きの消費スタイルであり、自分の趣味に合った生活スタイルを実現することである。

  今号は、「生活の楽しさ大発見時代の市場多面化戦略」を基調論文として、メーカーの企業戦略、流通企業のマーケティング戦略に関する論文を掲載した。
  基調論文は、去る2月17日に行われたJMR特別セミナーにおける基調講演の講演録から抜粋、加筆修正したものである。「ニューノーマル」をキーワードに、消費の世代交代、新世代の向かっている消費、「ニューノーマル」を攻めるマーケティングについて提案する。

  第2論文は、日本の情報家電メーカーの生き残り戦略を、最大のライバルである韓国サムスン電子を競争相手と想定して模索した。
つづく第3論文は日本の自動車産業とメーカー戦略についてである。特集の最後は「買い物満足のマーケティング」をコンセプトに買い物の現場におけるマーケティングアプローチについてまとめた。


生活の楽しさ大発見時代の市場多面化戦略

本稿は、去る2月17日に行われたJMR特別セミナー「“あきらめない”マーケティング─成熟市場での需要開発─」における、弊社代表松田の講演録を要約したものです。

本日は話を大きく3つに分けて進めていきます。

  ひとつ目に、『「嫌消費」世代の研究』(東洋経済新報社、2009)で取り上げた「嫌消費」世代というものが今どうなっていっているのかということです。「嫌消費」世代は、現在27歳〜31歳ですが、彼らの消費スタイルはやはり今までの世代とは違うようです。そして消費嫌いな「嫌消費」世代たちが持つ、もう一つの側面を皆さんに紹介できればと思います。

  2つ目に、彼らが向かっている消費の方向は一体どういう方向なのかということをお話します。それは、ニューノーマル(新しい普通)という方向ではないかと考えています。ニューノーマルとは日本のガラパゴス消費現象ではなく、今アメリカでも注目されている消費スタイルです。皆さんもいろいろな消費財を拡販していく必要があるわけですが、そのときの一つの手掛かりとして、このニューノーマルという消費スタイルを紹介させていただきます。

   3つ目に、ニューノーマルを攻めるためには、これまでのマーケティングは通用しないのではないかということです。そして、今までの垂直統合的な発想や、4Pで考えていく従来のマーケティングから発想を転換し、市場をプラットフォーム化することが必要になると考えています。プラットフォームと言えば、例えば家電業界だと「何か一つの共通基盤を作ること」とか、自動車だと「車体を同じにする」とかいうイメージなのですが、同じように、お客様に集まっていただける場を作り、そのプラットフォームをベースにした上で、お客様への価値の提供を考える必要がある、と思うのです。従って、ニューノーマルを攻めるために、プラットフォーム的な発想で戦略あるいはマーケティングを組み立てていくことを提案します。


なぜ消費が低迷しているのか─消費の転換期

日本では、消費が低迷し、根拠なき閉塞感が漂っています。日本経済のGDP500兆円のうち、300兆円は個人消費市場です。この300兆円がうまく動いていかない理由は何なのでしょうか。

  原因を5つほど挙げていきたいと思います。

  ひとつは、やはり「デフレだから」。物価が下がっていくのだから当然消費は伸びないという説です。

  2つ目は消費者の節約態度です。リーマンショック以降、7割ほどの方が「節約している」と言っています。だから、消費が伸びないのだという説ですね。

  それから、3つ目にエコノミストが好きな説で、「所得が減ったから」という説です。
一世帯の家計収入でいうと、97年に59万5,214円というピークを迎え、現在は52万692円となっています。これにはボーナスも平均して入っていますが、ピークからすれば7万4,522円のダウンです。消費支出額を見ても、97年の35万7,636円がピークで、それから現在は31万8,315円となり、マイナス3万9,321円となっています。

  このように、所得が次第に減っていることが、モノが買われていない背景なのではないかという説があるわけです。

  ところが、待てよと。平均消費性向はどうなっているのでしょうか。

平均消費性向とは、可処分所得の中に占める消費比率です。収入が高いときは、平均消費性向は下がるという傾向を持っています。
97年以降、図1のように、収入が減少していますが、収入が減少しても消費支出は下げませんので、平均消費性向は上がっていきます。ところが、2005年以降、バブル後世代が本格的に消費市場に入ってくると少し様子が変わります。
図1の近似線を見ていただくとわかりますが、平均消費性向は低下傾向にあるわけです。
最新の2010年のデータでは、平均消費性向は74.0%まで下がってきています。ということは、収入に関係なく、平均消費性向が低くなってきていることがわかり、これも消費低迷の一因と言えるのです。


図1 平均消費性向の相対的低下

  最後に5つ目ですが、消費には世代交代があったと捉えています。
  『「嫌消費」世代の研究』で取り上げ、『「買わない」理由、「買われる」方法』(朝日新聞出版、2010)でも深掘りしておりますが、今、新しい世代が登場しています。

  いわゆる「嫌消費」世代と言われる人たちです。

  彼らは、「クルマ買うなんてバカじゃないの?」と言いますし、大型テレビも要らないと言います。ワールドカップでの本田のゴールをワンセグで見た若者は約3割います。エコポイントで大型テレビを買ったのはほとんど50代、60代ですし、エコカー減税でプリウスを買っているのも50代、60代です。

  海外旅行については、今は円高で少し盛り上がっていますが、「行きたいところはどこですか」というと、ヨーロッパやアメリカではなくて、オーストラリアと言います。なぜかというと、携帯電話が通じて時差もなく、孤立しないからです。

  それから、グルーポンを含めてクーポンが大ブームです。
「化粧水に1000円以上出すなんて考えられない」と言いますし、「結婚式は意味が分からない」と言う方が大変多いと聞きます。
「親のためにやって、人前で恥をかいて、300万円も払うなんて考えられない」というのが、今の若い人たちの結婚式観です。
「とにかく30歳までに1000万円貯めれば何とかなる」と考える「嫌消費」世代。
あまり消費をしない世代が登場してきたということです。

  ところが、その背景では、若者たちの貯蓄がどんどん膨らんでいっているのが明らかです。90年代に貯蓄が膨らんでいますがこれは収入が高かった時代ですから貯蓄が高まっていくのは当たり前です。
収入が下がっているにもかかわらず、20代は傾向線として上がっていっています。一方、60代以上になるとどんどん消費性向は上がっていき、平均消費性向の年代差がどんどん拡大していっているというのが今の大きな特徴です。
  日本の消費は高齢者でもっていると言ってもいいでしょう。2009年時点の平均消費性向のデータによると、全体では75.7%ですが、若い世代の25〜29歳が一番低くなっていて73.7%、60代以上の方々は90.0%以上です。
土地家屋の借金返済も含めると、収入を超えて、貯蓄を取り崩して生活されているようです。


蓄積される購買力

消費をしないということは、現金が貯まっているわけです。
図2によれば、個人家計資産はピーク時で1540兆円ありました。今は少なくなって1453兆円になっていますが、この中に占める「現金・預金」の比重は、実は上がり続けており、2009年には803兆円となっています。
これはつまり、約800兆円の市場が眠っていて、「嫌消費」の裏側で、購買力がどんどん蓄積されていっているのです。

図2 家計の金融資産残高の推移

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、若い20代の貯蓄額(中央値)は250万円ほどで、クルマを買おうと思えば買えますし、住宅の頭金にもなりえます。しかし、買っていない。ということは、この貯蓄の引き出し方によって何とでもなるというのが、今の日本の市場だと思います。そして、どう引き出すのかが、これからの課題になります。

  具体的な貯蓄額で見てみましょう。これは平均値ではなく中央値で、100人のうちの50番目の人など、全体の真ん中にいる人の貯蓄額の数値を挙げています。
全体では820万円、60〜65歳の方は1180万円です。1180万円で残りの人生の約20年を生きるためには、少々足りない感もありますが、一時期に比べ下降傾向にあります。

  一方、若い人たちは235万円まで上昇してきています。2000年あたりも結構高いのですが、これはITバブルで収入が高かった時代の名残と見ていただいたらいいと思います。若い人たちはどんどん貯蓄をしている。年配の方々はどんどん貯蓄を取り崩している。
そのような構造で蓄積されているのが800兆円というお金です。
もし、800兆円の10%の80兆円が株に流れれば、株価は15%上がります。
また、もし80兆円が何かモノに向かうと、日本のGDPの成長率は115%になります。
800兆円分の10%、つまり消費者が持っている10%の貯蓄がどこに行くかで日本経済は大きく変わってくるというのが、「嫌消費」のポジティブな面です。
マーケッターとしてはここに目をつけたいところです。

  ちなみに、ご存じのように、今の為替相場を動かしているのはオイルマネーや新興国マネーだといわれています。しかし最近再び「ウォール・ストリート・ジャーナル」をにぎわせているのが、「Mrs.Watanabe」と言われる人たちです。Mrs.Watanabeというのは、個人投資家の俗称です。個人外貨預金額はリーマンショックの前がピークで、リーマンショック後、FXで失敗した人がいてガクンと落ちましたが、再び5兆円まで上がってきています。それでもたった5兆円です。800兆円のうちのたった5兆円を動かすだけで、世界経済のマネーの動きが変わる、と言われているわけです。

このように800兆円の埋蔵金が日本には眠っているわけですが、それを自由に引き出していっているのは国債であり、赤字国債を発行している政府です。私どもが一生懸命800兆円を貯蓄すると、政府金融機関は何も買うものがないので国債を買う。それが政府の負債であるおよそ900兆円に充当されているわけです。

それは社会・経済・政治動向および企業活動の影響を受けたブームなどマクロの視点と、そのマクロの視点を踏まえて消費者がどのような行動を起こして、自分たちの「幸せ観」を実現させようとしていくのかといったミクロの視点が必要である。
  コトラー等は、マーケティング3.0は「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」で構成要素されているとしている。
  情報テクノロジーの進化によるソーシャルメディアの台頭により、消費者参加の時代になり、「協働マーケティング」が一つのキーであるとしている。
  また、グローバル化が進化することにより、パラドックスな課題が様々、起こっている。例えばモノやサービスや人が自由に移動できるようになったが、一方で自国をグローバル化の影響から守ろうとするナショナリズムが強くなるといったものである。それへの対応として「文化マーケティング」がキーであるとしている。
  最後にあげているキーが「スピリチュアル・マーケティング」というもので、直感的に理解が難しい概念であるが、消費者の価値観がより「人間らしい生き方」「創造的な生活」に向かっていることへの対応としているようである。


2.将来不安よりも生活の楽しさの再発見へ

この循環を少し変えるだけで大きな変化を生む可能性があるということが、今の消費の背景です。
新しい世代の登場でいろいろな業界が変わっていくかもしれない、という中で、特に流通業界は大激変を迎えるだろうと考えています。

  バブル後世代に「今後利用したい流通業態」を聞いたところ、男女ともに増やしたいのはインターネットでした。
また、男性が減らしたいのはコンビニエンスストアでした。
以前は中食ブームといわれましたが、コンビニエンスストアでおにぎり2個とお茶を買うと、結構割高な昼食になります。
自分で弁当を作った方がよほど得ですからね。

  消費におけるこの世代のウエートが高まると、コンビニは嫌われ、その代わりに食品スーパーなどは、品ぞろえの面で非常に注目される業態になっていくのではないかと思われます。
  実はその傾向は東京では既に現れていて、成城石井が圧倒的な強みを発揮していることはご存じのとおりです。
コンビニエンスストアでは3,000アイテムしかありませんが、成城石井は5,000アイテムを揃えています。
このアイテム数の違い、それから従業員の親切度も違いまして、そういうものが圧倒的な差を生んでいるようです。

嫌消費世代の消費スタイルが大きく変わってきている結果として、選択される業態が変わってきているということでしょう。

「自己実現」から「自由享楽」へ─変わる時流

2番目に、蓄積されている800兆円のお金をどう引き出すかということを考えたいと思います。
人々の価値意識を毎年分析していくと、6年前には自己実現志向という、自分のやりたいことや理想や夢を実現したいという価値意識が一番強く、そして「小泉さん万歳!」と言っていました。
ところが2009年になると真逆の価値意識が強くなり、2010年に1番に出てくるのが自由享楽志向で、自由気ままに現在を楽しもうという価値意識です。
2番目に出てくるのが他者依存で、周りに合わせていこうという意識、それから伝統保守志向、自己実現と続いています。

  1960年代にマズローというアメリカ心理学会の会長が発表した説では、人間の欲求・欲望には、生存欲求、安全欲求、帰属欲求があり、最終的には皆が自己実現欲求に向かうとされていました。
しかしこの説は日本では通用しないということです。そして現在のトレンドとしては、周りと協調しながら現在をうまく楽しみたいという価値観の方向に動いていると思います。

日本の7つの世代

弊著『「嫌消費」世代の研究』の中で明らかにしたように、われわれは、日本における世代を少子化世代、バブル後世代、団塊ジュニア、新人類、断層世代、団塊世代、戦後世代の7つに分類しています。
そして、価値意識を4つに分けて若い世代から年配の世代まで並べると、ちょうどバッテンのようになります(図3)。
価値意識が全く逆になって、優先順位が違っているのです。価値意識の世代格差が開き、価値観がどんどん変わっていっているということですね。

図3 価値意識の世代格差

7つの世代の中でも、バブル後世代というのはどうもこれまでとは違い、特有の世代意識を持っているようです。
私どもはいろいろな心理分析をしますが、14歳や17歳の心理は非常に重要だと考えています。
この世代は、バブル崩壊をはさみ、社会の価値観が180度変わった時期を小学校高学年〜中学生で経験しています。
  ゆとり教育のはしりで「競争してはいけない」と教えられたものの、就職するときには、就職難。
そのときの英雄は村上ファンドの村上さんやホリエモンでしたが、それが検察によって悪者にされる。さらに今、検察がひっくり返っているわけです。
バブル後世代は、たった12年間で、何度も何度も価値を塗り替えられてきた時代背景をもち、社会の変化に翻弄されたことで作り出された独特な世代なのです。
  その結果、彼らは学校も会社も信用できなくなっています。実力主義賃金体系で終身雇用制もございませんし、年功序列賃金体系もない。
また、この世代は将来を非常に暗く見ますから、暗い日本の将来と自分の自信のなさとが共鳴して、将来が暗いから自分に自信がない、自信がないから将来は暗い、という心理的なマインドの悪循環に陥っていく傾向が非常に強いわけです。
  そして、自信がないと、収入は上の世代に比べてそんなに多くならないだろうと考えます。 さらに、将来税金が上がっていきそうなことを考えれば、支出を抑えていかなければ合理的ではない、と判断します。
  従って、この世代が現在の収入に見合った支出をしないのは、将来に対する見通しのなさと、将来に対する見通しを切り開いていく自信のなさによるものなのです。
これは日本の社会全体が作り出した構造でもあるわけですが、注目すべき点は、今、世の中を徐々にリードしているのはこの世代だということです。

バブル後世代の消費の4つの特徴

バブル後世代の消費の特徴は4つあり、まず平均消費性向が総体的に低いことが言えます。それから2つ目に、無駄のない、無理のない、無謀でないことを好みます。
これを私は三さん無む主義と言っていますが、例えばローンまでして買うことは無理をしている、と考えるのです。

  私の知っているバブル後世代の編集者は、団塊ジュニア世代のお兄さんが家を買ったのだと、ものすごくびっくりしていました。「30年ローンを組むなど考えられない、国債はどうなるか考えていないのか」と言っていました。とにかくその世代は非常に合理的な行動をしようとする。それから3つ目に、選択的耐久財、特にクルマやAV機器、住宅への関心は低いこと。これらはリスキーだと思ってしまうのです。
また4つ目に、衣食、情報・コンテンツ・サービスの衝動買いは非常に多い。
  そして全体的には、「暗い将来を考えるよりは、むしろ現在を楽しんだ方がいい」という消費スタイルをもち、他の世代をリードしています。
つまり、これからの議論は、この世代をどう攻めるかが重要になります。

新しい世代の「ニューノーマル」

消費をリードしていっているバブル後世代の関心は、クルマよりも自転車、大型テレビ・AV機器よりも10万円する炊飯器、高級化粧品ではなくネイル・まつげだそうです。
7,000〜8,000円するネイルを大体2週間に1度やりますし、まつげは1本70円で両目にすると140本、9,800円のお金をかけています。
  酒・ビールは飲まない。ビールメーカーの方にしてみれば殴ってやりたいと思うかもしれませんが、ビールは赤ら顔になるから嫌だと言う。
その代わり缶コーヒーには詳しい。缶コーヒーの品ぞろえは現在日本で1,800種類あります。水にも大変詳しいです。
  外食、中食よりも、内食・手づくりを好み、ローンは大嫌いですが預貯金は大好き。金利を上げるとネット銀行に殺到し、金利を下げるとぱっと消えるそうです。
  結局、彼らは何がしたいかというと、日常を楽しむ、「ニューノーマル」という現象が起こっているのではないかと思います。
  実はこの「嫌消費」世代というのは世界中から注目されており、私も様々な国のメディアから取材を受けました。
ヨーロッパもアメリカも景気が良くないですし、ひょっとすると日本のようになってしまうのではないか、日本のようになりたくないという気持ちがあるのでしょうか、日本の消費に対する関心が再び高まっているのです。
また、どうも日本の若者は、新しい傾向を持っているのではないかと推測しているようです。
その関心のテーマが「ニューノーマル」です。リーマンショック後の新しい消費スタイルは、今までとは少し違うのではないか。
それが日本の若者の間で起こっているのではないか、ということです。

  この新しい消費スタイルはシンガポールでも興味をもたれており、シンガポール国立大学に作られた研究所は、Frugal Engineering(節約エンジニアリング)に関する研究、例えばこの嫌消費世代が欲しがっているクルマなどの研究をしたいという考えから設立されたそうです。

バブル後世代が求めているような50万円のソーラーカーを作るには、技術的にまだ問題がありますが、彼らの消費への価値観や、新しい消費スタイルは、これから成長していく新興国のライフスタイルになっていく可能性があるとともに、今後重要になってくるのではないかという興味として世界に広がっているようです。
日本は閉塞感に包まれていると言う人もいますが、本当にそうでしょうか。
少子高齢化で大変と言いますが、それは日本が先進国で唯一人口のコントロールに成功した国という意味ではないでしょうか。

  先日、80歳を越す静岡産業大学の学長から「高齢社会と言うな、長寿社会と言え」と言われましたが、日本は暮らしやすい豊かな長寿社会なのではないでしょうか。
日本の失業率はアメリカと比べると半分ですし、東京での1人当たりのGDPはアメリカの1.5倍です。
医療費も85%まで政府が出してくれるし、消費税もたった5%です。
今の若い人たちは、日本は結構な国じゃないか、そして、むしろこれを積極的に楽しんでいった方がいい、と考えるようになっているのではないでしょうか。
そのため、彼らの消費の方向がこれまでの支出の方向とは違ってきているのではないかと思うのです。


※本提言「消費フロンティアへの接近」は、「営業力開発」誌 2011年・No210号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:JMR生活総合研究所)へ掲載されています。 尚、誌面では以下の様な構成にて続きます。

「消費フロンティアへの接近」

T.生活の楽しさ大発見時代の市場多面化戦略
  3.新しい消費スタイルを市場多面化で攻める
U.情報家電メーカー七つの生き残り策─サムスン攻略法
V.EV時代の新自動車産業
W.ものづくり型自動車産業から移動システム産業へ
X.店頭マーケティングから買い物満足のマーケティングへ


 
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