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創マーケティング

経済界では、100年に一度の大波乱。3.11には1,000年に一度の大震災が起きた。これら以前から少子高齢化、年金問題、格差社会等、様々な課題が指摘されていた。外的環境のため、さらに課題解決のハードルが、高くなったように感じる。

  大震災の直後から企業はスピーディーに動き、その現場力は各方面で高く評価された。
震災後、半年以上が過ぎ、やがてまもなく一年がやってきてしまう。今後は、目先の復旧・復興だけではなく、未来を構想しながら動いていく必要がある。大阪では新たな社会・都市構想を政策に掲げた党派が圧勝した。
求められるのは、創造力であり、構想力である。

  マーケティングとは、顧客理解から出発して、そのニーズをキャッチアップし顧客価値を創造し、それを企業活動に反映し具現化していく。いうまでもなく、行政や企業など提供側の都合で商品やサービスを押しつけるという発想は微塵もない。
  将来の社会・経済ビジョンを創るには、まさにマーケティングの出番である。

  本稿は時系列という視点をいれて、震災後の生活者がどのような消費価値観・意識・行動であるかを実態ベースで報告することにした。
これら生活者の実態を理解したうえで、企業としてどうありたいか、「ありたい姿」を描いていき、それを実現させるための戦略を考えていただくことを期待している。

  それらを描くため、弊社の新サービスも最終章で紹介させていただいております。一緒に将来の日本を創っていきたいと考えております。

  なお、本稿は、(株)JMRサイエンス、川島隆志、竹重美咲、新藤愛、朴海燕、池添久美子によるものである。


生活者の意識・行動を理解する

自社の個性を輝かせることができるソリューションを考えるにあたっても、そのスタートは顧客理解からである。本稿では、マクロ的視点および、それぞれのライフステージ別に、大震災後の消費者の実態を報告している。ベースとなっているのは、2011年度10月に実施したライフスタイル調査である。

  ライフステージは、20−30代未婚、子育てママ&パパ、60代と分けて、紹介している。Web調査ということもあって、後期高齢者のデータは、ここではリサーチできていない。別に高齢者モニター・ネットワークを所有しているので、今後は注目していきたいと考えている。

  以降の章のキーワードをまとめたものを下表に示すので、参考にしていただきながら読み進めていただきたい。


■実態調査のまとめ 図1

実態調査のまとめ 図1


消費価値観の変化をみる

1.日本の人口と消費

2011年、振り返れば3月の「東日本大震災」と「原発問題」のインパクトは大きい。そのインパクトは政治・経済だけではなく、一消費者の価値観と消費行動に大きな変化をもたらすものであった。

   2008年のリーマンショックは100年に1度の経済危機と言われ、日本人の消費は節約志向の高まりを見せた。しかし今回の震災はそれを超える1000年に1度といわれる大震災、しかも日本国内で起こったことだ。以前より変化しつつあった日本人の幸せ観・消費の志向性はどう変化していくのであろうか。

◆消費支出の変化

図1は2007年以降の二人以上・勤労者世帯の実収入、可処分所得、消費支出の推移を表したグラフである。
2008年秋のリーマンショック直後、消費支出は大きく減少し、その後実収入・可処分所得ともに減少傾向が続いたが、2010年は収入や消費意欲も回復傾向にあった。
しかし震災直後の2011年3月、実収入・可処分所得・消費支出のいずれも減少、特に消費支出の急激な落ち込みが目立つ。消費意欲の減退がここまで顕著に現れている。その後7月には実収入・可処分所得は前年同期比を上回るが、消費支出の回復にはまだ至らない。

■総務省・家計調査より二人以上・勤労者世帯の実収入・可処分所得・消費支出の推移(図1)

総務省・家計調査より二人以上・勤労者世帯の実収入・可処分所得・消費支出の推移(図1)

図2は品目別に消費を消費水準(季節調整値、2010年を100とした値)で見たものだ。2011年3月に教育費と家具・家事用品を除いた品目で落ち込んでいる。特に落ち込みが目立つのが被服・履物費と教養・娯楽費で、まさに選択的支出の品目が影響を受けていることが分かる。

■総務省・家計調査より二人以上・勤労者世帯の品目別消費水準(季節調整値、2010 年を100 とする)(図2)

総務省・家計調査より二人以上・勤労者世帯の品目別消費水準(季節調整値、2010 年を100 とする)(図2)

◆人口集中・高齢化の地域格差

震災という予測不能な事象が起こったことによる経済不振・消費の冷え込みとは別に、日本では何年も前から継続的に抱え続けてきた課題がある。それは少子高齢化の加速が経済に与える影響だ。
平成22年は国勢調査が行われた年であり、その結果の一部が2011年10月26日に発表された。
ニュースでも報道されたが、総人口は1億2805万7352人、2005年の国勢調査と比べると+0.2%の増加率であったが、日本人の人口は1億2535万8854人、前回調査から37万1000人の減少で、国勢調査開始以降、初めて日本人の人口は減少したという。

  都道府県別で2005年から2010年にかけての人口の増減(図3)を見ると、人口が増加したエリアは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、滋賀県、大阪府、福岡県のわずか9都府県のみ、その中でも増加率1位は東京都(4.6%)、2位は神奈川県(2.9%)、3位は千葉県(2.6%)と首都圏に集中している。
一方で北海道、宮城県を除く東北地方、四国地方、山陰地方では減少傾向が目立ち、ますます首都圏への人口集中に拍車がかかっている。

■総務省・H22年国勢調査より都道府県別人口の増減率(図3)

総務省・H22年国勢調査より都道府県別人口の増減率(図3)

また年代別の人口構成比(図4)を見ると、男性は5人に1人は65歳以上、女性にいたっては4人に1人が65歳以上という人口構造になり、高齢化社会が進んでいることが浮き彫りになった。この高齢化も地域によって格差が見えている。

■総務省・家計調査より性別・年度別年代構成比(図4)

総務省・家計調査より性別・年度別年代構成比(図4)

図5-1は都道府県別の人口に65歳以上が占める割合を5段階で色分けした結果である。人口が減少傾向にある宮城県以外の東北地方、四国地方、山陰地方、そして和歌山県での高齢者率が高い。

■総務省・H22国勢調査より都道府県別65歳以上人口構成比(図5-1)

総務省・H22国勢調査より都道府県別65歳以上人口構成比(図5-1)

一方で20代が占める割合(図5-2)を見ると、首都圏以外でも人口あたりの大学生数が多い京都府や宮城県、北海道など地方でも20代の人口構成比が高いところはある。
しかし、働き盛りである30代〜40代人口が占める割合(図5-3)を見ると、首都圏と愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県など一部の地域のみに集中するようになる。

■総務省・H22国勢調査より都道府県別20-29歳人口構成比(図5-2)

総務省・H22国勢調査より都道府県別20-29歳人口構成比(図5-2)

■総務省・H22国勢調査より都道府県別30-49歳人口構成比(図5-3)

総務省・H22国勢調査より都道府県別30-49歳人口構成比(図5-3)

都道府県単位で見ると、日本の中でも人口の流出と高齢化問題が深刻な地域、せっかく20代が多くても働き盛りとなると外部に流出してしまう地域、人口過密化が進む首都圏と、様々な課題を抱えていることが分かる。

  さらに都道府県の中でも人口の集中と過疎は進んでいる。

  例えば大阪府の人口増減率をさらに細分化して市区町村別に見たものが図6である。大阪府内においても中心地区であるいわゆるキタ〜ミナミの増加率が非常に高い。
  大阪を例にとったが、各都道府県内で同じような課題はある。
これら地域の差異に震災復興課題を加えると、今後さらに地域が抱える課題は多様化し、そこに住む消費者の価値観と消費行動もその影響で地域による差異というものが強くなるのではないだろうか。

■総務省・H22国勢調査より大阪府の市区町村別人口増減率(図6)

総務省・H22国勢調査より大阪府の市区町村別人口増減率(図6)


※本提言「創マーケティング」は、「営業力開発」誌 2011年・No213号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:JMRサイエンス)へ掲載されています。尚、誌面では以下の様な構成にて続きます。

「創マーケティング」

T.生活者の意識・行動を理解する
U.消費価値観の変化をみる
  1.日本の人口と消費
  2.消費者の価値観の変遷
V.60代の生き方観と消費動向
W.未婚20〜30代男女の結婚・仕事観、対人意識の変化
X.ママ&パパの自己表現型消費
Y.創マーケティングへの取組み


 
過去の提言論文バックナンバー
大震災のインパクト
コミュニケーション新接点
消費フロンティアへの接近
日本型マーケティング3.0
選びたくなる店頭研究
顧客との絆を創る
嫌消費をのりきるために
破壊的マーケティング・イノベーション-激動する市場から未来を切り拓く-
個店価値の新創造
脱マスメディア時代のお客様へのアプローチ
不況を乗りきるマーケティング
新しい消費者を理解する法則
変わる「選択行動」と「選び筋」
需要の「再編集」と寡占化戦略
潮目をどう読み解くか
新しい消費者を理解する法則-「幸せ観スタイル」と「ライフコース」-
次世代マーケティングの切り口
口コミから巻きコミへ
エコ・コミュニケーション
新ネット時代のマーケティング
再成長期の市場深耕のチャンス
巻きコミマーケティング
店頭を基点とした機能"連結"
ネットワーク時代の新しいマーケティング
パワーネット・マーケティング
人口減少時代を考える
「企業価値」を高めるプロモーション戦略
「パワー・ブランドの構築とCRM戦略」
消費回復下のマーケティングチャンス
ブランドの拡大と強化
小売のメガグループ化と顧客支持
価値ベースのマーケティング戦略構築」
「情報差別化で売る 」
デフレ不況下での消費者マインドを読む
コラボレーションによる売場活性化
デジタルな時代の新しいマーケティング戦略構築
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「商品育成」をミッションとする営業の「売場つくり機能」
流通生産性を向上するメーカー戦略
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デジタルな時代の新しい消費者を理解する法則
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e流通革命への対応戦略
IT技術の活用と展望
店頭活性化への機能再編成
顧客とのリレーションショップの再構築
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