View Point 野菜を使用した低アルコール飲料「トマーテ」

 

超ロングセラー「ヤクルト」のリブランディング

乳酸菌飲料「ヤクルト」は73年の歴史と世界で1日約2,500万本を販売するロングセラー&ベストセラーブランドだ。 しかし、日本では売上本数が昭和47年に1,600万本であったのが平成18年には830万本と約半分になっていたが、高付加価値商品の 相次ぐ市場導入によって金額で売上をカバーする状態が続いていた。ここ数年“リブランディング”への取り組みによって売上本数 そのものを急激に伸ばすという大きな成果を上げている。

■価値が伝わっていない?!

ヤクルトが73年売れ続けているには理由があるからだ。しかし、その理由が問題であった。 ヤクルトのイメージは「身体に良い」、「お腹の健康を守る」「良い菌が入っている」という商品特性からではなく、 「子供向け」「馴染みがある」というように、商品価値が全く伝わっていないことが調査によって明らかになる。 “商品の価値が消費者に伝わっていない”ことは、ヤクルトに限らず、多くの商品が抱えるマーケティング課題といえる。

■「基本的価値」を伝える

そこでヤクルトの原点でもある「L.カゼイ・シロタ株」という菌の価値を訴求することにコミュニケーション戦略の焦点を設定する。 それはマス広告、パッケージ、店頭イベントなど統合型コミュニケーションが展開された。従来この菌訴求はほとんど実施されてこなかったという。 一般的に「基本価値」よりも、そこから提供する「機能価値」や「情緒的価値」などに偏ったコミュニケーションが行われがちである。 ヤクルトの事例はこの「基本価値」の見直しの重要性を示唆しているのではないか。

■先入観という自己規制

ヤクルトのリブランディングは2つの規制を乗り越えた事例といえる。一つは“特保の規制”を乗り越えて以下のような商品周り での取り組みが行われた。これらは一見単純なことではるが、このことが意外に効果を発揮していることに注目したい。
・シュリンクフィルムデザインのリニューアル
・JANコード変更
・10本パックの導入
しかし、この単純であるが故に、実行というレベルでは逆に困難が伴う。「売る側の妙な先入観がお客様の購買機会と販売チャンスを奪う」 という2つ目の規制、“自己規制”を乗り越えたことは、このケースから学ぶべき一つのポイントであろう。

■なぜ価値が伝わらないのか?

なぜ、価値が伝わっていなかったのだろうか。ヤクルトは上市されて間もない新製品ではない。70年にも及ぶロングセラー商品だ。 ヤクルトのイメージ調査でスコアの高いのが「なじみがある」。いわゆる“慣れ”は、ある意味で強いブランドの証明でもある。 なんとなく、理由もなく、気がつくと買ってしまっている。しかし、この“慣れ”だけでは売上を維持することは難しい。それ以外に “買いたくなる理由”が必要となっている。
価値が伝わらないもう一つの要因が社内にある。 商品、部署それぞれがコミュニケーションや販促テーマや展開時期、やり方がまちまちであることにある。いろいろなことはやってはいるのだが、 消費者には届いていない。また、従来型の単発的なプロモーションも一つの要因でもある。 価格の時代だからこそ、商品の価値を見直す。価値訴求によって需要はまだまだ活性化できる。