トップページ
サービスメニュー
営業力開発誌
JMR戦略ケース研究会

→活動内容とサービス
→過去のテーマ(東京)
→過去のテーマ(大阪)
→顧客接点レポート
→お申し込み

セミナー
会社案内
リクルート
お問い合わせ
JMR生活総合研究所

ブランド戦略が売場を変える

 

既存店不振と定番

06年度に入って、各業態チェーンの「既存店前年比」がますます悪化している。特に客数の減少は明らかに「オーバーストア」の影響であり、構造的にはこの傾向が継続する。 チェーンの関心は、ますます「客単価アップ」、特に「商品の高額化・高付加価値化」に注がれていくであろう。

数年前、チェーンバイヤーの調査で「定番売場の革新・エンド展開の革新」、どちらを重視するかをたずねたところ、「定番」が7割を超えていた。 エンドに比べ売場効率が悪く、顧客の立寄率も低い「定番売場」を強化しないことには、生産性が低下するばかりである・・という判断からの回答だと推測される。「定番革新」への願望は、今も同じであろう。

この場合「定番」とは、主に「加工食品売場」や「日雑・化粧品売場」をイメージしている。特にSMが重視している生鮮やデイリーの売場では「定番の強化」とは、即、「商品開発力の強化」となり、自主MD、オリジナル商品開発が連動してくる。

反面、「加工食品」や「日雑・化粧品」では、メーカーのナショナルブランドへの依存率が高く、「定番の強化」と言っても、チェーンが主導的に実施できるのは、「売場レイアウト」「棚割」「売価政策」などに限られる。

チェーンの「定番政策」として、売価政策に傾注され、エブリデーロープライスなどの施策をメーカーに要請していった。その結果、価格政策だけの「定番売場」は、消費者にとって魅力のない売場と評価され、ますます「定番」は変化の少ない、サイレント売場になってきた。まさに「既存店不振」は「定番不振」であり、「メーカーのNB不振」であった。

年2回、「定番を革新する」棚替

ほとんどのチェーンにおいて、「加工食品」「日雑・化粧品」は、3月、9月に「棚替」と称して、売場変更が行われる。主たる業務は、メーカーの新製品を導入し、効率の悪い既存品をカットする作業である。厳密には、消費者の生活・消費行動の変化から、「カテゴリー」の見直しや、魅力のある「商品のグルーピング」「売場の最大効率化のためのスペースマネジメント」「補充作業の効率化も考慮して、フェーシング」など、いわゆる「棚割」が考えられるが、日常的に実施されている「棚替」は、新製品の導入と、ロス商品のカットという「差し替え」である。

メーカーにとっては、この時期に「新製品」を投入し、広告宣伝でバックアップする。新製品の優位な売場条件を獲得しつつ、既存商品の定番維持と売場の確保を狙っている。

しかし、この作業、店舗数が膨張しているチェーンにとっては大変な作業である。短期間で全店舗が一斉に「棚替」するというのは、不可能に近く、本部の定番施策が完全に実施されている店舗は3割に満たないという報告もある。

「お茶」と「ヘアケア」の「棚替」

秋の「棚替」の実態を検証するために、チェーンの異なる4店舗の「定番」を、8月末と、11月上旬に再現してみた。対象カテゴリーは、夏場需要と冬場需要の変化が想定される「茶系飲料」と、「メガブランド競争」が激化しているシャンプー、リンスなど「ヘアケア」である。さらに、エンド・島などフリースペースの展開も、合わせてチェックしてみた。

■「特保・シリーズ化」が、既存の売り場つくりを変えた「茶系飲料」

「健康価値」で成長する茶系飲料

 茶系飲料は緑茶、紅茶、烏龍茶、ブレンド茶などのカテゴリーに分かれ、市場全体では約560万キロリットルの出荷で、その中で最も大きいのは「緑茶飲料」で47%を占め、次いで「烏龍茶飲料」18%、そして「紅茶飲料」15%、さらに「ブレンド茶」13%、その他となっている。

昨年までの飲料カテゴリー全体を牽引していた「緑茶飲料」は、06年に入って5%前後の減少に転じ、変わって「紅茶飲料」や「ブレンド茶」が好調であると言われている。「ブレンド茶」は、種子・根などを使ったものを総称しており、代表的なブランドにコカ・コーラの「爽健美茶」がある。主に「健康訴求」をコンセプトとする商品が多く、拡大基調になっている。

さらに、「茶系飲料」では、昨年の花王ヘルシア緑茶、今年のサントリー黒烏龍茶に代表される「特保」のウエイトが急速に高まっている。

「茶系飲料」で果汁や炭酸に頼る他の「飲料」とは違い、原料・技術開発による価値開発が可能なカテゴリーとして、低価格下での収益悪化に悩む飲料メーカー、小売りチェーンから期待されている。

ちなみに、「飲料全体」での強者は、コカ・コーラ、サントリー、キリンの3強で、それにアサヒ、伊藤園が追撃をしていると言われているが、「茶系飲料」では、「伊藤園」を筆頭に群雄割拠の構造であり、各社とも「茶系飲料」を注力カテゴリーにしている。

ここでは、「茶系飲料」から、「紅茶飲料」を除く「緑茶」「烏龍茶」「ブレンド茶」を軸に、4店舗の棚替をチェックしてみる。ただし、「缶飲料売場」「紙パック売場」は売場・定番を特定するのが難しいため除外した。

「夏」と「秋」とのスペース変化

4店舗合計で、8月末の定番アイテム数は延べ243アイテム、1376フェースであった。やや寒さを感じるようになった11月上旬では240アイテム、 1271フェースと、予想したほどの減少ではない。アイテム数では、A店、C店で増加している。(図表1)

チルド・常温でのアイテム数・総フェース数

また、エンドなどフリースペースでの展開は、4店舗合計で8月末16ヶ所、延べ20アイテムに対し、11月中旬は19ヶ所、36アイテムと増加している。(図表2)

茶飲料のフリースペース展開
茶系飲料における「特保」の構成

成長が著しい「特保」であるが、アイテム数では18%、フェース数では15〜18%を占めている。4店舗中A店、C店では8月末より、11月上旬の方がアイテム数、フェース数とも構成比を増やしている。(図表3)

結論的には、「茶系飲料」は「9月棚替」においては、売場スペースではほとんど変化がなく、アウト展開も秋口でも活発であった。

「9月棚替」における「差し替え」

茶系飲料において「9月」を前後して新発売された新製品は伊藤園「さらさらそば茶」、サントリー「伊右衛門焙じ茶」、キリン「蔵出し封切り生茶」など人気シリーズの品番追加に留まっている。

それでも新製品の導入率は高く、11月上旬での「定番アイテム」の内、「新製品」の構成比は8%、フェース数で10%を占めている。さらに、8月末にはなかった「既存商品」の「追加」は、アイテム数で17%、フェース数で15%を占めている。両方を足すと、現在の定番の25%のアイテム、フェース数が「新しい商品」に差し替えられた。(図表4) 新製品の少ない「9月棚替」にあっても、1/4が差し替えられたことになる。

棚替時における新製品・追加アイテム構成比

ただし、「追加アイテム」の全てが、「本部定番」から外されていた品番が「追加」された訳ではなく、その多くは「選択品番」か、もしくは「定番登録されていても店発注がなかった」、あるいは「定番以外の売場」で展開されていたものが「定番に戻った」など、多様な要因が含まれている。

「茶系飲料」のグルーピング

「飲料」の売場構成は,かなり多様である。「冷やして売るチルド売場」と「常温」の売場、さらには容器で「ペット」「缶」「紙パック」でも区分されている。また、近年では先に触れたように「特保」をグルーピングする売場もある。「緑茶」を買おうという明確な目的をもって店に入ると、チルドで、常温で、ペットで、缶で・・と、非常に探しづらい思いをすることがある。反面、「飲料なら何でも良いが・・」と思って、店に入ると非常に広い選択の範囲を与えてくれる売場になっている。

4店舗中、最も売場面積の大きなB店では、「チルド飲料売場」は、サイズ別に「2gゾーン」「1gゾーン」「500mlゾーン」に分かれている。また、常温での一般品は「2g」の大容量に限ってボリューム陳列がなされている。

さらによく注視してみると、どうもコカ・コーラ製品だけ集めたというゴンドラも発見できる。さらに、缶飲料だけの売場もあり、多様なグルーピングがなされている。 一方、A店での定番展開は「チルド売場」だけで、あと常温は全てエンドなどアウト展開となっている。

売場つくりで、店の特徴が出るのが「特保」の扱いである。

先の売場前面積の大きなB店では、「こだわりの一品」というグルーピングの売場があり、他の「こだわり飲料」を含み、3尺3本で展開されている。その内2本程度が「健康訴求の茶系飲料」となっている。この売場の「茶系飲料」は、11月上旬にはかなりのアイテム増加になっており、中小メーカーのこだわり商品が追加されている。

「健康訴求」の代名詞のような「特保」の銘柄では、カルピスの「健茶王」や、ヤクルトの「蕃爽麗茶」が置かれているが、代表銘柄で、大ヒット商品のサントリー「黒烏龍茶」や花王「ヘルシア緑茶」はチルドでの展開となっている。(図表5)

高回転の商品でボリューム陳列を志向する「特保・健康飲料」を、「こだわりの(低回転でも高値入)一品」と同じ土俵では扱いにくいという悩みが見て取れる。

D店でも「健康果汁飲料」などを含む「健康志向飲料定番」を作っているが、8月末に比べ、11月中旬では「茶系飲料」のアイテムは減少しており、「健康訴求」だけでの売場構成が難しいことを表している。(図表6)

一方、C店では、(他のカテゴリー飲料を含まない)「茶系飲料」だけで「特保・健康志向」のゴンドラを作っており、D店よりは分かりやすく、まとめやすい。(図表7)

A店は、チルド売場しかないことから、チルド売場の「茶系飲料ゾーン」で、コカ・コーラ「からだ巡り茶」などを含み「健康に良い茶系飲料」というゾーンを作っており、そのゾーンが広がっている。(図表8)

A店では、冷凍食品の上部天板の上に「黒烏龍茶」を大量に陳列しており、食事との関連販売をも意識している。

また、A店のゾーニングを注視すると、ブランドのシリーズ化を意識している様子が伺える。この秋の新製品であるアサヒの「熟成濃茶」の限定商品「産地賞受賞記念」、コカ・コーラ「一」の新製品「じっくり旨み」、キリン「生茶」の新製品「蔵出し生茶」を、シリーズでまとめてゾーニングしている。

ブランドのシリーズ化演出

飲料では、毎年のように1000万ケースの大ヒットとなる新製品が登場している。茶系飲料でも00年のキリン「生茶」、04年のサントリー「伊右衛門」、05年の「若武者」などである。こうして大きなブランドに成長した商品が、今年は「シリーズ化」に突入した。「濃い」商品の追加が、どのブランドでも実行され、さらにラインエクステンションが進んでいる。

こうした動きが、これまで「常温・チルド・容器サイズ別、容器種類別」と、売り手の都合で分けられていた「茶系飲料」のグルーピングを「機能・効用・ブランド」によって再構成する動きへと発展していった。

「棚割」に大きなインパクトを与え、「定番売場のグルーピング」を変えるような力は、やはり「商品価値」であり、そのトリガーはメーカーにあることを、この茶系飲料の売場が物語っている。今後、茶系飲料では、さらなる技術開発・機能訴求などにより、付加価値商品が開発され、その価値によって「定番売場」を変えていくだろう。

■売場のメーカー主導を高める「メガブランド政策」

「メガブランド」のシステム化

メーカーのブランド政策が「定番売場」を変えた事例として「ヘアケア」カテゴリーがある。

従来は、メーカーの「ファミリーネーム」を冠とするブランド、例えば「花王メリット」「ライオン植物物語」「カネボウナイーブ」「資生堂スーパーマイルド」が、国内メーカーの主要なブランドであった。それに対抗して、ユニリーバ、P&Gが、大型の複数ブランドに資源、特に広告宣伝費を集中していた。その結果として「ラックススーパーリッチ」がシェアNo.1の座を保持してきた。

05年、花王の「アジエンス」は、国内メーカーとして異例な「メガブランド」への集中投資を実現し、シェアトップに君臨した。そして、今年資生堂の「TSUBAKI」が50億と言われる広告費の大量投入によって、シェアトップの座を奪った。

それに対抗し、ユニリーバは急遽ラックスとダブを「Wネーム」にして、さらに商品ラインのシリーズ化を進めた。かってヘアケアと言っても中心は「シャンプー」と「コンディショナー」のペアで、売場もその詰め替えを下段に配する程度のことであった。しかし、今のヘアケア売場は、シャンプー、コンディショナーに加え、トリートメント、ケアマスク、ヘアパック、エッセンス、さてはヘアメイクまでもの、幅広いシリーズブランドになっている。まさに、ヘアケアをシステムとしてとらえようとしている。

こうしたブランドの商品構成によって、一ブランドの定番売場は、詰替えと併せて、かなりのスペースを必要としている。A店では、5本のゴンドラで合計26段の棚があるが、そこで展開されているブランド数は(Wネームを1とカウントして)全部で30ブランドしかない。11月上旬では、資生堂スーパーマイルド「チカラ」とカネボウ「ICHIKAMI」の導入によって、コーセー「サロンスタイル」と、資生堂「fino」、カネボウ「RESCHE」の三つが定番から消えている。(図表9)

メーカーの売場主導力の発揮

メガブランドの浸透は、メーカーの「ブランド構築」のためのマーケティングの賜物であり、売場つくりにも発言力が増していると思われる。

C店では、5段の棚6本でヘアケア定番が構成されているが、8月末に比べ、11月上旬では、花王の「アジエンス」「エッセンシャル」「メリット」が1本に集約され、同じように資生堂「TSUBAKI」「水分ヘアパック」「スーパーマイルド」「同チカラ」「fino」が1本にまとめられている。他「ラックス」「ダブ」「モッズフェア」などユニリーバや、「海のうるおい藻」「ICHIKAMI」「ナイーブ」のカネボウなども、集約されている。(図表10)

日経新聞の調査によれば、バイヤーの仕入れ基準は、一に広告宣伝・二にブランド力であると報告している。さらに、「定番商品を増やす」よりは「高額商品を増やす」、「既存仕入れ商品を中心に」よりは「新製品を中心に」仕入れるとされている。結局、メーカーのマーケティング努力に依存している訳で、少なくともヘアケアにおいて売場つくりのリーダシップを発揮しているとは言い難い。

売りの実質を追うという面では、定番だけを見ていてもその実態は理解できない。特にヘアケアの「定番」とは「登録商品の見本市」のようなもので、実質はアウト展開に寄っている。4店舗とも、メーカー主導のアウト展開は多様で華やかである。(図表11)

中には、最も大きな店舗であるB店は、8月末と11月上旬の棚割は全く変わっておらず、9月に導入された資生堂「スーパーマイルドチカラ」はエンドにあった。「ラックス」「ダブ」「ICHIKAMI」と、今年のヘアケアは通常より早く立ち上がっており(B店では8月末時点で「ICHIKAMI」はすでに「定番」にあった)、「棚替」も早めだったのかもしれない。また、メーカーからすれば、定番売場への導入がどうであれ、アウト展開で「実」をとる方が優先課題なのかもしれない。

チェーン本部のMD力の発揮

小売チェーンのMD力の発揮場所は、どうも大手メーカーの「メガブランド」にはないことは明白である。つまり、「それ以外」のネーム商品にどれだけ「品揃え力」を発揮するかである。「メガブランド」だけに品揃えを集中させれば「どこにもある『ヘアケア』売場」に陥ってしまう。

先のB店の大手メーカーブランド以外の「ヘアケア」の3本の定番売場では、いわゆる「サロンブランド」が品揃えされている。こうしたジャンルこそ、本部バイヤーの腕の発揮どころであろう。(図表12)

これまで4店舗の「茶系飲料」と「ヘアケア」の、「秋の棚替」を見てきた。ここで発見できたことは、「定番」の構成に関する限り、メーカーの商品政策が色濃く反映され、商品進化があるごとに売場が変化していくということである。

この当然とも思われる検証は、メーカー営業が、マーケティングセクションが、もっとチェーンの売場つくりに関与すべきだという結論にたどりつく。すくなくとも、そこ(売場)がリアルな顧客接点であるからである。

しかし、残念なことに「定番」に棚割はあっても、演出・メッセージ性はほとんどない。

まだまだ「定番」に力が注がれていない。それが次の課題である。