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JMR生活総合研究所

集客力の減少と客単価アップ

 

依然として続く「既存店不振」

05年度の大手小売企業の決算は、既に報告されているとおり、

  • イオン・イトーヨーカ堂が、前期大幅減益から、人件費削減や在庫削減でともに40%近くの増益に転じた。
  • しかし、GMSの低収益性は依然として大きな課題であり、ダイエー・西友が単体赤字となった。
  • SMでは、「増収増益組」と「減収減益」組にはっきりと二分した。前者はライフ・バロー・オークワ・アークスで、後者はマルエツ・東急ストア・いなげやである。
  • 成長基調を持続してきたドラッグストアも、影が見られ、CFSコーポレーションは減収となり、マツモトキヨシ、カワチ薬品は単体で営業利益が減少となった。
  • 出店ラッシュであったホームセンターも、ケーヨー・ダイキ・島忠・セキチュー・ジュンテンドー・ナカイなどが減収となった。

全体として、ゆるやかな好景気、多少の消費の持ち直しで明るい兆しが見えてきている小売業ではあるが、今後の課題として、合併・再編が大きく進むであろうことは容易に予測され、セブン&IYと西武グループ、ダイエー・マルエツのイオングループ入りなどを頂点として、様々な合従連衡、そして離散が飛び交うであろう。

全体としてはまだら模様の小売業ではあるが、はっきりとしているのは「既存店不振」である。

好業績のコンビニエンスストアにあっても、既存店減収は2000年から6年連続しており、さらに日経新聞によると17社中11社が既存店減収だったと報告している。セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートなど大手もマイナスである。

既存店増収であったのは、原信・マツヨシ・マックスバリュー東海・ヤマザワ・サンエー・ライフ・コスモス・ゲンキー・レディ・スギ薬局セイジョー・サンドラッグ・コメリ・ハンズマンなど、各業態で数えられるほどでしかない。

俗に「既存店収益によってしか、新規投資余力は出ない」とされている。華やかな新店でも、累積黒字になるためには数年かかると言われており、どれだけ既存店で利益をストックできるかが、小売企業の持続的な成長力の決め手となっている。その意味では、昨今の「良い業績」も、やや影のあるものと言わざるを得ない。

「既存店不振」の構造変化・・・客数が減少になった

よく知られているように「既存店の伸び率」は、「客数(レジ通過客数)の伸び」と「客単価の伸び」に分解される。さらに「客単価」は「買上げ点数」と「商品単価の伸び」に分解される。

04年度までの傾向は「客数増加・客単価減少」である。さらに、もう少し細かく言えば「商品単価」の大幅な減少であった。「デフレ」が「売価競争」の爆発を生み、毎日のように価格が下がっていた。様々な業界で、2000年に入ってから、出荷数量は横ばい、ないし微増に転じているのに金額ベースでシュリンクするという悩ましい現実があった。それを補うため、小売業のMDの最大目的は「買上げ点数の増加」にあった。

一度来店していただいたお客に、いかにいろいろな商品を買っていただくか、そのための「クロスMD」「POP・メッセージボード」が志向された。バイヤー・店長は「安くすることで『まとめ買い』が発生する」ことに期待はしていなかった。「売価」目当ての客の単価が低いことも知っていた。

05年決算と既存店伸び

しかし、「低価格」による集客力を無視することはできなかった。確実に「客単価」が減少する一方で、「客数」だけでも伸ばすことで、既存店の減収を補いたかったのである。

05年の決算、さらに、06年に入ってからの月次営業報告は、これまでの傾向とは大きく異なっている。

図表1は、主要小売企業の決算で、既存店の伸びと、客数・客単価の伸びを04・05年で見たものである。また、06年上期で報告されている企業の数値を表したものである。

さきほど触れたように「既存店の減収」は、04・05年とも、ほぼ共通している。好転している企業もあれば、さらに悪化している企業もある。06年上期でもイズミが好転したのみである。

これまで「維持・ないし微増」といわれていた「客数」は、減少に転じた企業が多くなっている。ローソン・ヨークベニマル・東急ストア・ツルハ・カワチ薬品・コメリなど大手企業でもマイナスに転じている。他でも、「悪化」(同じ増加でも増加率が下がった、あるいは、同じ減少でも減少率が上がった)している傾向がはっきりと読み取れる。

一方、「客単価」では、依然「売価競争」が収まっていないこともあり、「単価減少」の傾向にあるが、「減少悪化」(減少幅が大きくなっている)しているのはローソン・ファミリーマート・サークルKサンクスのコンビニエンスストアでしかない。バロー・CFSコーポレーション・ツルハ・スギ薬局・コメリ・ホーマックなどでは「プラス」に転じている。

あきらかに、04年までの既存店の構造と、05年の構造には大きな差がある。06年上期の報告では、このことがもっと顕著になっている。

06年上期が報告されているのは、GMS・SMがほとんどで、その全てで「集客数」が減少している。そして、「客単価」はユニー・イズミ・イズミヤ・平和堂・マルエツが「増加」に転じた。明らかに、「客数減少・客単価アップ」が基調になっている。

さらに、図表2では、「客単価の伸び」を「買上げ点数の伸び」と「商品単価の伸び」の報告があった企業だけを取り上げている。企業数が少ないだけに顕著な傾向を読み取ることはできないが、05年度には「買上げ点数」の増加が平和堂・ヨークベニマル・東急ストア・ヤオコーで見られるが、「商品単価」で増加になっているのはCFSコーポレーションしかない。ただし、06年上期では、そのCFSコーポレーションはマイナスとなるが、ヤオコー・平和堂・イズミで「増加」に転じている。

客単価の内訳

05年の状況は、「売価競争」はまだ進んでいるが、「買上げ点数の伸び」が、「客単価」を好転させていたように見える。そして、06年、さしもの「売価減少」は一段落したのかも知れない。

「売価による集客力の低下」

04年と05年の変化、分かりやすくイメージしてみよう。

「売価が下がって、買上げ点数が下がって、客数が増えた」04年までの構造を説明すれば、「安い売価の商品を狙って、個々の商品が安い店を、それぞれ選んで利用した」のが04年までである。日本の人口が減少に転じたのは今年からとはいえ、昨年までは全く伸びていなかった。組織小売業が業種店のお客を奪ったというには「買上げ点数」が下がっている説明にはならない。

1回の買い物で、買いたい商品の売価がそれぞれ安い店を何軒も回れば、客数(レジを通過した回数)は増え、「買上げ点数」は分散されるだけ、1店では「減少」する。やはり「売価を安くすれば」来店客数は稼げたのである。ただ、その「商品」目当てであるから、「まとめ買い」も「複数買い」も起きずに、安いものだけが売れて「商品単価」が下がり、それだけが売れるから「買上げ点数」も下がる。それが「デフレ不況」から続いていた。

しかし、05年には大きく変化した。「客数減少(レジ通過客数の減少)」で、「買上げ点数増加」である。結局、前に戻った。つまり、「売価の差」だけで、何件もの店を渡り歩くことがつまらなくなった、あるいは値段も差はなくなってきたから、1件でいろいろ買ってもさほど損はしない。

これを消費者の側から説明すると「買い物の頻度や、購買数量は、この間変わっていないのだが、買い物する金額を節約するために、購入店が04年までは徐々に増えていたが、05年ころから、それが戻った・・04年の比較では少なくなった」のである。

もちろん、店側の「買上げ点数拡大」の努力が実ってきたことや、「オーバーストア現象がより進み」商圏人口が計算上は縮小していること、さらには「ゆるやかな好景気」などの影響がこうした変化を生んだということも言えるが、消費者の購買態度の変化によって変わってきたという方が、この構造変化の説明は理解しやすい。

結局、「売価による集客稼ぎ」が通用しなくなった、ということである。また、大きな問題を小売業は抱えた。

いち早く「回復」した外食産業では、既存店が8ヶ月連続増収となっているが、今年の5月から「客数減少」であるが、「客単価」が増収となっている。ここでも「売価による集客」が一段落している。(図表3)

外食既存店前年比・日本フードサービス協会

「業際化が進む」小売業

少子高齢化、人口減少、オーバーストア、さらには購買接点の多様化(オンラインショッピング・駅なか・デパ地下・フードパークなど)、小売業の集客をめぐる課題は年々重みを増している。

さらに、ショッピングセンター・モールが集客力を高めているとはいえ、都市中心部の小規模なストアはかってほどの集客力はない。

小売業の「集客」とは、遠いところからお客を集めるのではなく、ひとりのお客様に何回も利用していただくこと、つまり「来店頻度」が課題である。言い換えれば「お客様の中の購買シェアを高める」ことが、「集客力」である。

これを実現する方法として単純なことは、「何でもある店」になることである。ドラッグストアがその代表である。店舗が大型化したドラッグでは、食品の扱いが拡大している。チルド売場はもちろん、SMでは効率が悪いとされている「冷凍もの」の扱いまで始まっている。多くのドラッグで、「店舗が大きくなっても、ケア商品はさほどアイテムを増やせない。結局、食品だけが売場を増やしている」としている。さらには軽衣料の扱いまで増えているが、「来店頻度」を増やす商材はなんと言っても「食品」である。

業態として話題性が薄れてきている「ディスカウンター」でも食品は集客力として最大の関心事になっている。関東の有力なディスカウンターであったロジャースの重点商材は「生鮮」である。生鮮売場の周辺にグロサリー食品が関連陳列されている。

「ワンストップショッピング」の小売側からの期待によって、また「業態・企業の差」が薄れてきている。

「ブーメランの法則」

小売業の関係者で話題となっていたファーガル・クイン (著), 太田 美和子 (翻訳)
の「ブーメランの法則」という本がある。小売業の成長は「顧客満足」によるリピーターの創造であるとしている。その実現のために「お客様の声をもっと聞こう」と主張している。

この当たり前のことが「売価競争」が一段落した今、重要な課題となっている。多くの小売業・外食の既存店で見られる「客数の減少」は明らかに「顧客満足の低下=来店頻度の低下」によるものだからだ。 「ブーメランの法則」では、「非日常主義−顧客に足を運ばせる売場の楽しさと驚き」を説いている。売上数値に影響するアクションだけに関心をもつのではなく、もっとお客様を喜ばせる、楽しませるアクション、プロモーションを重視すべきだとしている。

「顧客満足」とは、「顧客がその店に行って得られるであろう価値の期待・予測に対して、実際に同等、ないしそれ以上の価値を得られた時に起きる、その店に対する評価」である。

「ブーメランの法則」では、「決まりきった日常の単調さを崩す。非日常性を演出し、驚きを与える。例えば・・ある日突然、店員がいつもと違うコミカルなコスチュームでいるとか・・母の日に、レジの下にカーネーションの入ったバケツを隠しておいて、女性客に1本手渡す・・」ことを薦めている。

このことを尺度に、多くの店を見ていると、変化のない「日常性」にあふれた店舗がいかに多いか、驚くばかりである。教科書によくに言われる「52週のMD」であるが、少なくとも消費者の目線からは「毎週のように変わっている」という店は、まだまだ少数派である。

こうした「非日常性」を発揮する力は「現場力」に他ならない。ひとつの店、ひとりの店員のアクションが、最終的にはお客に感動を与える源泉である。ある小売業の幹部の方から「小売業には慢性的な人材難に困っている。絶対数としての従業員の確保というより、優秀な人材が極めて少ないという意味での人材難である。」ということを聞いたことがある。急速に進んだ多店舗化と大型化により、従業員数は膨張しており、その教育は遅れている。

かってホームセンターは「多店舗化できない」と言われた。他業態に比べプロの顧客も多く、しかも対面・接客の比率が高いため、人材確保ができないと店舗を増やせない」からだ。そのホームセンターが多店舗化に走ったのは2000年に入ってからである。はたして、どれだけの「顧客満足」を得られたのであろうか。

このこと、小売業に限ったことではないと思うが、少なくとも、オーバーストアの時代を勝ち抜く鍵は「人材育成」にあることだけは確かである。

進む専用商品開発

もう一方、オーバーストアを勝ち抜く方法として、「そこにしかない商品」がある。それが「安い」だけではなくより価値の高い商品として、「他にない商品」である。

セブンイレブンでは、売上の半分以上が「非NB」、セブンイレブンにしかない商品が占めているとされている。多くのコンビニエンスストアでは、売上の4割を「非NB」で占めたいとしている。「PB」も重要な「非NB」であるが、他に「NBメーカーが特定小売業のためにだけ開発した商品」ならびに「OEM開発」を中心とする「ベンダー」と呼ばれるメーカーが作っている商品である。広い意味では「専用商品・自社開発商品」と言われる。

ヨークベニマルでは決算資料で、「開発商品の現状」を報告している。(図表4参照)

ヨークベニマル開発商品の状況

いくつかの特徴が読める。

  • 04年2月期までは、「開発商品」で品目数が一番多かったのは「加工食品」であった。しかし、その数・売上に占める割合は、06年まで変わっていない。
  • 一方、「デイリー食品」は、この3年間で急速に増え、売上に占める割合、粗利に占める割合ともに増加している。
  • さらに「住居用品」は、数・売上構成比・粗利構成比ともに急速に伸びており、「加工食品」の水準になっている。

極端に言えば「加工食品・住居用品」の開発商品が「PB」である。「デイリー食品」の多くが「専用商品」である。

この「デイリー食品」、惣菜、ベーカリー、生鮮、これらが今のSMの重点注力領域となっている。特に今や「四番目の生鮮」と言われている惣菜は、その売り上げが全売上の10%を超えるところまで目標化されている。これが「他にない商品。そこでしか買えない価値のある商品」になった時に、顧客の来店頻度は増える。「ブーメラン効果」を高める商品が、「専用商品」である。

ツルハでも決算資料で、開発商品の状況を報告している。(図表5参照)

ツルハにおけるPB商品の状況

ツルハでは「PB商品」としている。ヨークベニマルやコンビニエンスストアとは違って、「生鮮やデイリー食品」の比率は極めて低い。ヨークベニマルで言えば「住居商品」と「加工食品」ばかりである。ツルハにおけるその進度は、

  • PB商品点数はこの3年で飛躍的に増えており3倍近くになっている。
  • その中心は、グループ化で大いにパワーが増している「ウエルシアPB」ではなく、一企業でしかない「ツルハPB」である。
  • PBが売上に占める割合は03年通期からすると3ポイント増えているが、04年からの3年間では1ポイントである。これを「早い」とみるか「遅い」と見るか?
  • 一方、粗利ではこの3年間に2ポイント増え、全粗利の18.5%となっている。

このツルハのPB商品の寄与率が、ヨークベニマルの「加工食品」「住居商品」における「開発商品」の寄与率と類似していることが注目される。

また、「仕入・商品開発力の強化」を目的のひとつとしていた「グループ化」の進度は思いのほか鈍そうだということも注目される。

ドラッグストアのPB強化、さらにはグループ化の進展、また「顧客内シェア」の拡大のために「食品」への急速なシフト、こうした施策の成果について注目すべきであろう。

集客力強化に寄与するメーカー像

これまで小売業の立場から、「客数」と「客単価」の変化を見てきた。なにやら消費者の店舗選択に変化が起きているようである。

この変化を、メーカーの営業課題として評価すれば、これまでは「買上げ点数の増加」のために努力をしてきた。特に、クロスMDやエンド山積によるついで買いの促進、さらには「売価競争助長の条件費」は、小売業の課題解決につながるものとして好意的に受け止められた。

しかし、「売価競争による集客」が一段落した後、「来店頻度を高める」ためのメーカー営業の課題とは何だろうか?

ひとつは、さらなる「売場の鮮度」向上であろう。「いつも変化ある売場」に協力することだろう。「52週MD」の実現、さらには「催事MD」の強化、店舗ラウンド増強による売場実現力強化のサポートであろう。

そして、もうひとつは「専用商品の開発」に協力することであろう。「PB」ではないかも知れない。「PB」が小売1社と「PB受託会社1社」の閉ざされた関係の中で処理されているに対して、いわば「チームMD」のように、「小売業」を中心として、多様なメーカーが、「特定小売業のお客さまの満足」のために協働しあうフレームがイメージされる。

ますます、小売業・メーカーの協働ワークの幅は広がっていくのであろう。またおもしろくなった。