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JMR生活総合研究所

店頭活性化のためのメーカー課題は何か

 

本誌では、06年10月より店頭を中心とした「顧客接点レポート」を提供してきました。この間、多くの事象とデータを収集することができましたので、その集約として、07年4月、大阪例会で報告いたしました。これはその要約です。

売場が変わってきた

毎日の生活に対する「価値」の提供は、その多くはメーカーの商品力と小売店の販売力の協働によってしか実現しません。(図表1参照)

図表1

コープ神戸によれば、組合員の評価で「食育に熱心」な会社は、「コープ神戸」に次いで、メーカーとして「カゴメ」「味の素」「キューピー」が上位になったそうです。消費者が「食」に対して「価値」を提供してくれるメーカーという認識です。

この3社、チェーンのバイヤーの評価も高いメーカーです。何かを取組む時に頼りになるメーカーだと言います。まさに、小売とメーカーが協働したときに、消費者はその努力を理解してくれるのです。

本日のテーマは「メーカーの課題」ですが、小売業のマーチャンダイジングとの関連で、どのように解決されていくのかをみていきます。

最初に、近年の小売業の売場の変化について、いくつかの事例を紹介しましょう。

ジョイフル本田というすごいでかい店舗を作っているホームセンターがあります。そのペット用品売場も広くて、そこへはペットをカートに乗せて買い物をすることができます。最近ではペットを室内で飼えるマンションが多くなっていますが、小売店にもペットと一緒に買い物が出来るようになりました。

売場のレイアウトも大きく変わっています。マヨネーズ・ドレッシングは、扱いは「調味料」ですからグロサリーの売場にありましたが、食のシーン・買い方からすれば「野菜・フルーツ」売場にあって当然です。イトーヨーカ堂の店舗ではそれを推進しています。

西友では、各定番売場に関連する商材がフックで吊り下げられています。例えば、缶詰定番では「缶切り」です。シャンプーリンスの定番では石鹸ホルダーです。この取組みを数年続けています。

コンビニエンスストアも変わってきました。売価もそうですが、POPや什器、エンドの演出もスーパー並になってきました。ただ、ややオーバーストア気味で長く既存店マイナスが続いています。CVSの課題は若い女性の来店が少ないことです。3:7の構成比をなかなか変えられないといわれます。

サークルKサンクスは、オフィスの女性をターゲットとした「Fork Talk(フォークトーク)」という業態を八重洲で実験しています。CVSやファーストフードは、立地・客層別業態・フォーマットを開発していかないともう出店するところがありません。大学構内とか、病院とか、アミューズメント向けの店舗が開発されています。客層からすれば、CVSはいつも若い女性に課題であったわけです。

「Fork Talk」は男女比を4:6にすることを目標としました。オフィスの若い女性を集客するために「できたてのおいしさを提供する」「くつろげる店内環境」「ちゃんとした、あたたかい、気軽な」店舗を開発し、ゆったりとしたイートインスペースで、店内調理の比率を35%にもっていくことを目標としました。イートインのメニューはパスタを中心にしています。

結果は40%がイートインで、パスタの4割はテイクアウトされていくそうです。女性比は70%になったそうです。注目すべき店舗です。

顧客の買い方が変わってきた

本論に入ります。まず、小売チェーンの実績を検討してみます。

CVSのみならず、どの小売業態も「既存店マイナス」に悩んでいるのはここ数年変わっていません。

既存店実績を「客数」と「客単価」に分解してみますと、04年までは、どちらかというと「客単価」が毎年のように低下し、「客数」はそこそこだったという状況でした。いわゆる「デフレ」だったわけです。

それが05年からちょっと変わってきました。「客単価」がプラスに転じてきたチェーンがでてきました。ホーマックやカーマといったホームセンターがよくなりました。次いで06年の中間決算ではユニー、イズミヤ、平和堂といったGMS、スーパーもよくなりました。しかし、既存店は依然としてマイナスです。今度は「客数」が減ってきたのです。

外食も同じです。05年までは「客数」は増えていたのに、「客単価」が減少を続けていました。しかし、06年に入って、逆に「客単価」は増え始めたのに、「客数」が減少しだしたのです。今年に入ってその「客数」も増えてきましたから、外食は一時の既存店マイナスから抜け出せたのです。(図表2参照)

図表2・外食既存店の売上・客数・客単価の伸び

では、何故「客数」が増えたり、減ったりするのでしょうか。

お分かりのように、絶対的なお客の数が増えたり減ったりするのではなく、「来店頻度」が増えたり、減ったりすることで「客数」は変化するのです。消費支出が大きく減少している訳ではありませんから、「購買頻度」が下がれば、1回で買う「単価」は増えるのです。もう少し具体的に言えば、「安い価格の店を徘徊する」のを止めて、「魅力のある店」で「購入点数や商品単価」を上げているのです。(図表3参照)

図表3客数・客単価の変化

あるドラッグストアのデータによれば、期間中の購買金額が多い上位1割のお客で、全売り上げの46.5%を占めます。粗利では47.1%です。さらに、全レジ通過回数では38.3%を占めます。いかに、来店頻度の高いお客が上顧客かがわかります。

多くの小売チェーンの経営者は「ブーメランの法則」という本を教科書にしています。お客様がかえって来てくれるためにどうするかという本です。

来店頻度を上げる、言い換えれば客数を上げるためにチェーンが強化するのが「うちにしかない商品」、PBであり、専用商品です。特にデイリー食品の専用商品です。

ヨークベニマルでは02年から04年度の間で加工食品のオリジナル商品は956アイテムから839アイテムに減少しました。一方デイリーでは795から1186アイテムと大幅に増やしました。デイリーのオリジナル商品が占める売り上げは33.8%です。俗にNBに対してPBといわれる加工食品のPB比率は11%しかありません。

CVSでは、セブンイレブンのNBの売上げは半分以下だと言われています。

CVSで強化しているFF、ファーストフード、お弁当・おにぎり、さらにはカウンターのおでん、デザート売場のスィーツ、焼きたてパン、みなオリジナル商品です。

後から申し上げるのですが、この傾向が進んでいきますと、小売りの売場には、こうした専用商品と、メガブランドと言われるものしか並ばないかもしれません。

量販店主導の「食」MD

さて店頭に話しを戻します。今年もスーパーでは「いちごフェア」が行われていました。これまではせいぜいいちごのある果物売場でコンデンスミルクが並んでいるくらいでしたが、昨年あたりからそれにいちごポッキーが加わり、さらにデザート売場ではいちごを使ったケーキのアイテムを増やし、パン売場でもいちごフレーバーのパンがエンドを占めるなどという売り方が目立ってきました。さながら全館「いちごフェア」のようです。

セブンイレブンでは昨年「新茶フェア」で、お茶葉は当然、抹茶クッキー、アイス、ドリンク、ケーキなど、あの店舗のいたるところで新茶・抹茶商品が展開されました。

この時、新茶は予約商品でしたが、この予約という売り方が非常に増えています。

量販店のMDの中で歳事は重要な課題です。

例えばチョコレートはバレンタインの2月14日に向かって需要が大幅に伸びていきます。家計調査では通常の日は1世帯1日10円前後ですが、2月5日には50円を突破します。昨年ですと、そこから14日には140円にまで一挙に増えていくのです。

同じように2月3日節分の日には「調理済み寿司」が1世帯当たり300円を超えるのです。これが恵方巻きです。大体1本250円位だと思いますので、日本人の4人に1人強がスーパーやCVSから恵方巻きを買って黙って恵方を見ながら食べているのです。

11月にはボジョレーヌーボです。1世帯当たり60円にまでなります。

12月はクリスマスのケーキです。1世帯当たり500円になります。

特筆すべきは、こうした歳事需要が拡大しているという点です。2月3日の「調理済の寿司」は2000年では181円でしかありませんでした。スーパーやCVSが需要を拡大したのです。

バレンタインも2000年では2月で888円でした。それが昨年は1058円です。世間で義理チョコなどが減っているといわれていても、バレンタインのチョコ需要は量販店の取組みによって拡大しているのです。今年も増えていると言われています。「自分へのごほうび」として高いチョコを買っていく女性が増えたからだそうです。

こうした歳事で盛り上がる需要は、その多くが「予約」という形で提供されます。そして、そのほとんどはオリジナル商品です。

昨年のクリスマスでは、イトーヨーカ堂は「ジャン・ガレー」「平野泰三」などに協力を仰ぎました。
イオンでは、「落合努」や「土屋公二」です。動物病院の「加藤元」なんていう人も監修しています。ペット用ケーキです。

おせちでは、イオンは「ホテルオークラ」「ヒルトン成田」「山口楼」です。西友は「下鴨茶寮」「なだ万」「京都野村」です

こうした歳事の取り組みは売場作りにも現れます。

「節分」では大きな鬼の面がエンドを飾ります。大きな恵方巻きが天井から吊り下げられます。床には恵方を示したシートが貼られます。

同じ時期、「バレンタイン」の売場も作られます。NBのチョコがあるだけなどという売場は例外で、これも有名ショコラティエが監修したチョコや手作りチョコのコーナーが、さながらお中元お歳暮のギフトコーナーのよう広さでアッピールしています。

さらにこの時期では「受験生応援」の演出で盛り上げっています。これまでは「キットカット」が「きっと勝つ」という語呂合わせで独壇場の歳事でしたが、昨年あたりから各メーカーが語呂合わせ商品を一杯出し、「受験生応援」の大きなコーナー作りにまで発展しました。

受験生にとって2月3日は合格するように恵方巻きを食べて祈願し、バレンタインでは女友達が合格するようにチョコレートをくれる。この2月の売場は受験生一色になりました。

ジャスコでは、グロサリーの多くのエンドに「受験生応援」ののぼりを掲げ、コーヒー、ココアや即席麺、カップスープ、アイスクリーム、菓子パンを特売していました。

中には合格祈願の絵馬が店内に一杯あり、それに記入すれば亀戸明神で祈祷してくれるなどという店舗まであらわれました。

これが、客数減少に悩む小売業の自主MDです。メーカーからすれば店頭販促とは、チラシに取り上げてもらって安い売価で単品をエンドに山積するというイメージになりますが、この時期そんな単純な売場はどこにもありません。

小売業がMDで力を入れているのは歳事ばかりではありません。現在どこでも注力テーマにしているのが「地産地消」です。イオンのジャスコやマックスバリューでは全国のいたるところで地の清酒を揃えています。

千葉なら「飯沼本家」「東薫酒造」「鍋店」「石上酒造」「寒菊銘醸」などという蔵です。埼玉なら「武甲正宗」「力士」「晴菊」「寒梅」「秩父錦」などという蔵です。

近郊農家でとれた野菜の朝取りはどこもやっています。イトーヨーカ堂では野菜の売上げの2割が朝取りだと言われています。

千葉の店では多くのスーパーがご当地米菓のコーナーを作っています。野田や銚子の醤油が有名ですからそれを使った濡れ煎餅が一杯あります。有名になった「銚子電鉄」の濡れ煎餅も品揃えされています。

秋葉原でブームとなっている、おでんの缶詰「銚子風おでん」や「サバカレー」も千葉の名産です。

「地産地消」と合わせて「トレサビリティ」、生産者の顔が見えるという取り組みも活発になりました。店内の至るところに生産者の顔写真が飾ってあります。ジャスコでは清酒・焼酎の杜氏の顔写真を目印・POPにしています。

顔が見えるという意味では対面・実演も促進されています。店内に釜で芋を焼いて提供するのは当たり前のようになりました。イトーヨーカ堂では、餅をついてその場でおはぎや大福をつくるコーナーを作っています。

単純なマネキンではなく、様々なメニュー提案をするクッキングサポートのコーナーつくりも進んでいます。ジャスコではクッキングステーションとしてその地、その時期にあったメニューを手作りし提案しています。ヤオコーではパートの方が朝作った手作りのメニューが店舗のいたるところに並べてあります。

ドラッグストアも季節・生活を軸に売場つくり、MDを強化しています。「風邪コーナー」や「花粉症コーナー」がそれです。今では「メタボリックシンドロームコーナー」です。ドラッグストアの「受験生応援」となりますと眠気ざましや逆にぐっすり寝られるグッスミンです。ドリンクや栄養剤、「フレッシュ酸素」です。

寒い冬の時期には「手荒れ・乾燥肌コーナー」も作られます。ドラッグも生活MDを強化しています。

「メガブランド」が売場をつくる

「地産地消」の話しをしていましたが、最近では生鮮の「ブランド化」が進んでいます。先のいちごなどはその典型です。

現在の「いちご生産量全国一」は栃木県で「とちおとめ」が有名です。それを激しく追い上げているのが「あまおう」の福岡県です。品質面では「あまおう」の方が上回っているといいます。「あまおう」の方が高く売られています。

この栃木と福岡の戦いは90年代にさかのぼります。当時「女蜂」で全国一位だった栃木を、福岡が「とよのか」で追い上げ、93年に日本一になりました。栃木は「とちおとめ」を開発し95年に一位の座を奪取しました。そして、福岡では「あまおう」を開発し02年から中心銘柄としています。スーパーの店頭では、「いちご」はすべて「ブランド表示」に変わっているのです。

きのこも、「雪国まいたけ」というブランドと、「ホクト」というブランドが競っています。

我々は、「ブランド」とは消費者にとって「選択の手がかり」であり、流通からすれば、自社の販売力と「融合・協働させる信頼感」だと定義しています。小売りはどんどん自主MDで、専用商品を開発していきますが、すべての商品をそれで埋め尽くす訳にはいきません。顧客・消費者から手がかりになっているメーカーブランドを取り入れていかない限り、顧客から「来店頻度」と「購入単価」を頂けないからです。

メーカーブランドが売場つくりに大きな影響を与えている市場に、「茶系飲料」と「ヘアケア」、シャンプーリンスの売場があります。昨年の8月の売場と、11月の売場、つまり9月棚割によって、どんな変化があったかをチェックしました。

「茶系飲料」は、当然、暑い夏に消費が増えます。だから、9月棚替ではアイテムとフェースは下がるだろうと思っていましたが、ほとんど変わりませんでした。

東京の4店のスーパー合計で、8月には定番で243アイテム、1376フェース、フリースペースの展開は16ヶ所、20アイテムでした。それが、11月にチェックしますと定番で240アイテム・1271フェース、フリースペースでは19ヶ所36アイテムとなりました。

さすが、フェースは8%ほど減少しましたが、アイテムはそんなに変わりません。しかも、フリースペースでの展開は11月なのに逆に増えているのです。

まず、定番でアイテムが減らなかったのは、「生茶」や「一(はじめ)」などのブランドが季節限定商品を発売したこともありますが、最も大きな要因は「特保」でした。花王「ヘルシア」に次いで、サントリーの「黒烏龍茶」がヒットし、「健康によいお茶」の需要が拡大したのです。その結果、「特保商品と、健康によい「ブレンド茶」のアイテムが増えたのです。さらに、フリースペースでの展開が増えたのは、まさにこの「特保ブランド」だったのです。冷凍ショーケースの上段カウンターや、精肉・鍋物売場の前に「ヘルシア」や「黒烏龍茶」が置いてあるのです。

「お〜いお茶」や「爽健美茶」「伊右衛門」「六条麦茶」、さらには特保ブランドが市場を開発・拡大し、通年商品、体によい飲料として売場を構成しているのです。

もっと激しく「ブランド」が売場を規定している市場が「ヘアケア」です。かってはヘアケアのブランド・売場はシャンプーとリンスしかなく、1本のゴンドラにいくつかのブランドが並べられていました。

しかし、近年「詰替え」「コンデショナー」「マニキュア」「マスク」など、ヘアケアアイテムが豊富になり、かつ大量な広告宣伝に支えられ、顧客の選択の手がかりとなっている「メガブランド」が多くのスペースを占めるようになりました。

「ラックス」「パンテーン」「ダヴ」「ヴィダルサスーン」「モッズヘア」「ハーバルエッセンス」などの海外ブランドに対して、花王「アジエンス」に次いで、資生堂「TSUBAKI」が大量の広告宣伝の投下で、トップの座を奪取しました。

定番ゴンドラの棚一枚を一ブランドで占めるということが珍しくなくなり、1本のゴンドラの上下で2ブランド、そして、数本のゴンドラを一メーカーでまとめてしまうなどという売場まで出てきました。

例えば花王は、「アジエンス」「エッセンシャル」「メリット」で3本を構成し、資生堂は「TSUBAKI」「フィーノ」、「シーブリーズ」「スーパーマイルド」で3本をまとめてしまうといったようにです。

こうした「メガブランド」に、チェーンのPBを加えて、「メガブランド」と「PB」で売場が構成されてしまうというチェーンも珍しくありません。

これまでふたつの流れについて述べてきました。ひとつは小売りの自主MDです、専用商品開発や歳事、予約でした。そして、売場に影響を与える「メガブランド」、それが生鮮にまで広がっているという話しでした。つまり、今小売りの売場はこのふたつの「協働」によって構成されているのです。

協働力を発揮する「ブランド」

我々は店頭に置かれているキャンペーンハガキを集めています。それを集計しますと、「メーカーと(個別)チェーンの共同企画」、いわばタイアップ企画が多いことが分かります。

例えば、昨年イオンと共同企画したのはカゴメ、ロッテ、明治製菓、キリンビール、サントリー、ユニリーバ、伊藤ハム、江崎グリコです。

その中でサントリーは、イオンの「フードアルチザン(食の匠)を応援します」というプロモーションを展開しました。サントリー商品を買って応募すると、イオンが認定した全国各地の郷土の味を守り続ける「食の匠」食材が当たるというプロモーションです。ありがちな、メーカー商品を買って、チェーンの商品券が当たるというどこでもありそうなキャンペーンではありません。サン トリーが、イオン固有の取組み課題に協働しているのです。

同じように、キューピーがいなげやの「シニア・ベジタブル&フルーツマイスターが選んだこだわり野菜」が当たるという共同企画を実施しました。

昨年の「メガキャンペーン」はキリンビールの「選ぼうニッポンのうまい2006」です。応募口数が2500万だと言われています。全国47都道府県のそれぞれの「うまい食材」が当たるというキャンペーンですが、その一環で個別チェーンとの共同企画も実施されています。イオンとは「郷土のおいしい食材とビールプレゼント」が実施されました。

カゴメはそのイオンと「新生活スタート・朝食応援・『5ADAY』」を実施しました。「5ADAY」とは「1日5皿分以上の野菜と果物を食べる」という「食育」です。

このように、小売りの自主的な取組み課題にメーカーが協働するというレベルのタイアップが確実に増えているのです。さきほど触れましたように「キットカット」は、毎年のように新製品・イベントを実施することで、小売りの「受験生応援」という顧客・生活密着のMDと協働しているのです。これが消費者に新しい生活の価値を提供していく構造です。

しかし、こうした協働、どのメーカーでもできるという訳ではありません。さきほど触れた「チェーンとメーカー」との共同企画ですが、やはり多く出てくるのはイトーヨーカ堂やイオン、マツモトキヨシです。カゴメや花王、キューピーやキリンビールです。それぞれ、顧客・生活者に「選択の手がかり」を与えている企業が協働力を高めていると言えましょう。

ただし、「雪国まいたけ」や「ホクト」、さらには南部地鶏の「あまたけ」という会社は、大手メーカーとの協働力に優れたメーカーです。チェーンと大手メーカーをつなぐコラボレーション力のあるメーカーも、協働価値を提供できる企業グループに入るでしょう。

ミドルマネジメントの確立

さて、本日のテーマに対しての結論のお話しをしましょう。テーマは「店頭活性化のためのメーカーの課題」でした。結論は、チェーン担当の担当者が販促金を一杯持ってがんばればよいという時代ではないということです。店頭を活性化する仕事はミドルマネジメントの仕事だと言うことです。

キリンビールは「食とビール」の結びつきを追求してきました。それを「商圏」に求めました。全国一律の「食」などというものはない、あっても味気ない、この地の今日の食とビールの結びつきが大切だと考えてきました。

そのために、各地のJAと組みました。漁業組合と組みました。地域催事と連携しました。

それを、チェーンに対してキリングループという形でビバレッジもナガノトマトも一緒にお手伝いしますという形をとっています。

こうしたグループ資源と、得意先チェーンを繋ぐ仕事は、一担当者の仕事ではなく、ミドルマネジャーが得意先方針と自社資源を繋ぐシナリオを描けていなくてはなりません。

チェーンの商品部長と検討する場を確保していなくてはなりません。社内のスタッフやグループの協働を促進する役割を担っていなくてはなりません。

生協で「V字回復」を成し遂げている「コープさっぽろ」があります。この原動力のひとつに「MD研究会」があります。全商品・全店舗のPOSデータが開示され、それに基づくメーカーの提案を、「MD研究会」という公開の場でプレゼンテーションしていただく仕組みです。各社のプレゼンテーションが公開され、審査に懸けられるので各社懸命になります。

「MD研究会」の原則として、「全て事実(POS)からスタートすること」「データを組み合わせてコープさっぽろの悪いところを探すこと」「解決策に迷ったら店の関係者にヒアリングすること」が鉄則です。

今年の初め、北海道の新聞がこのことを取り上げて、「今年、各メーカー札幌支店のミドルの人事異動が多かった。それはコープさっぽろの『MD研究会』で良い評価を得ようと優秀な人材を送ってきたからだ」というような記事がありました。まさに、コープさっぽろを「V字回復」させたのは、メーカー・ベンダーのミドル達です。(図表4参照)

あるホームセンターの商品部長からのお話を聞いたことがあります。そのチェーンでは不採算部門をカットしたため基礎売上が前年に比べ10%下がってしまいました。多くの取引先の営業は10%下がることを前提に、前年比数%アップ、つまり全体では昨年を下回る数値を目標としてきました。

「異常値を持ってくる営業はいないのか!」と思い、ある取引先に相談したところ「昨年と同じではおもしろくありません。逆にフタケタアップさせましょう」と支店長がもちかけてくれたそうです。そのチェーンの商品部長も真剣になり、毎週の担当者会議は勿論、商品部長と支店長が隔週、先行計画と積み超した数字を挽回できる商材・企画・策はないかという検討を重ねたそうです。見事目標を達成されたそうですが、これなどもミドルマネジメントの成果です。

ミドルマネジメントを確立するポイントはいくつもありますが、ふたつだけ強調させていただきます。

それはミドルマネジャーの得意先理解力です。列挙しますと・・

  1. 得意先方針・その具体化を受領、ヒアリングする能力です。
  2. もう一方で、自社の方針・狙い・目標・企画を伝える能力です。
  3. 双方の「取組み会議」の招集者はミドルです。全体のシナリオ、進行、提案の主体です。
  4. 独自に得意先の様々な関与者との接触を日常的に実施することです。
  5. 得意先の「強さ」「弱さ」を指摘できる力です。
  6. 双方で、中期的な協働のあり方について議論・検討・意思決定ができることです。

担当者と同行をするというレベルのマネジメントでは、足下を見られて販促金を取られるだけです。なによりも最終顧客に「価値」を提供できません。「選択の手がかり」を提供することはできません。(図表5参照)

とすれば、二つ目のミドルマネジメントは、3つのマネジメント対象に対して、自分がチームの重要得意先のために何をするかです。

  1. 当然、得意先です。その関係者です。バイヤーの上司です。店舗運営です。幹部です。
  2. 自社の関係者、特にスタッフ、幹部を得意先のために、巻き込む活動です。会社資源を引き出す活動です。
  3. そして、最後のアクションは「外部」、よくあるのはメーカーからすると「卸」ですが、もっと重要なのは得意先を同じくする「メーカー」です。 メーカー連合を組めないと、お役立ちが小さくなるのです。
    さらに、その商圏の協働可能な人々です。JAもあります。地元大手企業もあります。その商圏の大学病院もあるでしょう。

私は、ミドルこそ「週間活動計画」や日報が必要だと思っています。毎日社内で会議して、時折部下にハッパをかけて、困ったときにだけ同行するような活動量では、小売りと協働して価値を提供できるメーカーにはなれません。

今、多くのミドル達が職場を離れます。団塊世代のリタイアです。しかし、これはよい機会だと思います。今一度、マネジメントのあり方について、考えていただければ、最終顧客から喜んでいただけるような策が生まれるものと信じております。期待します。