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JMR生活総合研究所

業態・企業「らしさ」の発揮「節分」「受験生」「鍋」「バレンタイン」2月の店頭

 

「食」のエリアマーケティング

 GMS・SMの食品売上げが既存店ベースでも前年を上回っている。日本チェーンストア協会では07年9月から12月までの4ヶ月、日本スーパーマーケット協会では8月から5ヶ月連続して、既存店ベースで前年を上回っている。(図表1参照)

図表1 07年スーパーの既存店実績

 08年実績の発表に関して、食糧新聞では次のように報道している。「07年1〜12月のGMS、SMの食品売上高は既存店ベースではGMSが前年並み、SMが前年を上回るなど堅調に推移した。加工食品や惣菜などが牽引し、猛暑と残暑でアイスクリームや飲料が好調だったほか、年末の気温低下で鍋物商材の動きが活発化した。」(08年2月3日)

 スーパーにおける「食」の活性化は、単に景気の浮揚や天候のためばかりではない。スーパー各社が、「食」、特に生鮮や総菜のMDに力を入れている、その効果でもある。

 「地産地消」は、そのひとつである。「食」の「通年化」や「全国化」が進んだとはいえ、まだ「シーズン性」や「地域特性」が顕著である。

 「地産地消」は、単に「その地で採れるものを、その地で消費する」というだけではなく、「その地」での「食」の特徴に合わせて、消費・販売するという意味でもある。特に「食」にはまだまだ「地域特性」が色濃く残っている。

 「家計調査」では、全国都道府県の県庁所在地を中心に、都市別の報告も行っている。サンプル数の限界から詳細をみるのは苦しいが、年間支出で見ても、とても大きな「地域差」があることに気付く。

 最も多く消費(数量ベース)している地域と、もっとも少ない地域との差が大きな「品目」をあげると、「まぐろ」「ぶり」「かに」「さといも」「れんこん」「たけのこ」など馴染みの食材が並ぶ。(図表2参照)

 こうした「地域差」に対する、販売サイドのMDは、「その地で多く消費されている食材を、より多く(競争用語では「シェア」を高める)販売することにあることは言うまでもない。しかい、それだけでは他の販売企業(スーパー、メーカー)と同じになる可能性が高い。もう一方のMD戦略は、「その地で馴染みの薄い食材の楽しみ方を提案する」という、市場の拡大・開拓という戦略がある。

 キリンビールがTVCMで提案している「ぶりしゃぶ」の舞台は富山県である。先の「(図表2)生鮮の地域差」では、「ぶり」を最もよく食べている都市は「富山市」になっている。この取組は、「富山」では地元の共感を得るために、その他のエリアでは「新しい食べ方」の提案であり、市場開拓である。

 「地産地消ばかりでなく、(地域の特産品を他地域に売り込む)地産外消にも取り組みたい」(ローソン)や、「地産全(国)消」(イオン)に取り組むMD戦略の狙いは、固有の条件をもった「店舗」単位での「商圏侵攻・開発」である。

 その成果として、ローカルチェーンが多い「スーパーマーケット協会」の「食・生鮮」の実績が、「ナショナルチェーン」が多い「チェーンストア協会」のそれを上回っている点が興味深い。

「食」の季節感

 「食の地域差」がMDの基本であることに加え、「旬」を重視することも「食」のマーケティングの基本である。

 家計支出は月次の報告をしているが、1年間で、「最も多く支出」された月と、最も「少なかった」月の「差」が大きい品目は、順に「もち」「みかん」「メロン」「かに」「さんま」の順である。こうした「旬」がはっきりっとしている商品については、「旬」の時期により多く販売することは当たり前であるが、「旬」の前(まだ価格が高い時期に)に不可価値、新製品を強化することが重要である。その意味では「季節商品」への対応は、年々「前倒し」になっていく。

 この「季節」、あるいはシーズン、歳事への対応は、多くは「チラシ」によって表現、訴求される。かってのような、売価訴求一点張りの、毎週変わり映えのしないチラシでは、こうした「旬」を捉えることはできない。各チェーンとも「季節・シーズン・歳事」を色濃く訴求している。

 節分2月3日のGMSのチラシには、このような季節・シーズン・歳事テーマが並んでいる。

■イトーヨーカ堂 「新入学フェア」
「バレンタイン」
「生活習慣病予防」
「春野菜」
「節分」

■イオン 「新入学・新社会人・新生活スタート」
「春のベビーセール」
「節分」
「春一番:かつお、寒の旬:ぶり」
「生活習慣病予防」
「花粉」

■ダイエー 「ご入学おめでとう」
「冬物売り尽くし」
「バレンタイン」
「節分」
「あったか鍋」
「毎日の健康のために」

■西友 「冬物うりつくし」
「新入学・卒業・フレッシャーズ」
「節分」
「いちごフェア」
「手作りバレンタイン」

 となっている。

 「新入学」や「節分」「バレンタイン」は共通するテーマであるが、「生活習慣病予防」「鍋」「いちごフェア」など、チェーンの個性が現れるテーマもある。特に、この時期に「いちごフェア」をもってくるのは、西友の特徴である。昨年の同じ時期にも「いちごフェア」を展開していた。

 また、「新入学フェア」では、「ランドセル売上げ日本一」のイオン、それを追う居トーヨーカ堂では、すでに「10%引き」を実施し、刈り取りを狙っている。ダイエー、西友では、この時期に「ランドセル」の広告はない。

 イトーヨーカ堂では、「カラダイキイキ」という特別チラシを発行し、カラダによいメニュー提案や、掲載食品のカロリー表示を行っている。厚生労働省が08年度から義務づけする「メタボリック検診」に先行する目的であろう。

「生鮮連動」を強める歳事企画

 チラシの訴求に連動して、売り場は「季節・シーズン・歳事」テーマで賑わっている。この時期の主要店舗の売り場で展開されている実態から、いくつかの変化・特徴を整理しておく。(図表3参照)

図表3月次家計支出

■膨大なコーナー展開になっている

 バレンタインコーナー

 バレンタインは、この時期の大きなテーマになっている。昨年もこのレポートで触れた通り、バレンタイン需要は「自分へのご褒美」を含め、年々拡大している。

 GMSでの展開、売り場作りでも、バレンタインは各ブランド専用ディスプレーや手作りバレンタインのコーナーなどで50本ほどのショーケース・ゴンドラで構成されている。しかも、売り場は「食品売場」というよりは、大きな「催事フロア」というような位置づけになっており、B店では食品フロアとは別の「催事フロア」で展開されている。しかも、ネクタイ、男性下着のバレンタインバージョンも多くの売場を占めている。

■テーマの多面展開

 バレンタインは、催事コーナー化しているフロア以外に、食品・菓子売場での展開も行われている。C店では、菓子のエンドサイドに大手製菓メーカーのチョコレートが吊り下げられている。また、D店ではサントリーがウイスキーのバレンタインラッピングを提案している。

 バレンタインだけではない。「節分」も、「がんばれ受験生」も、売場は多面的に展開されている。A店では、水産売場に面した、エンドに「がんばれ受験生」ののぼりが掲げられ、「サラダ」「カップ麺」「シチュー」「コーヒー」「シリアル」が山積されている。

 また、「節分」は、豆蒔き、恵方巻きの特設売場のみならず、総菜、水産品、加工食品の売場でテーマアップされている。特に、今年は「手作り恵方巻き」の、「寿司エンド」がほとんどの店で展開されていた。

■生鮮・デイリー連動がより強化

 「節分」テーマでの多面展開で、今年、特に顕著になったのが「いわし」の訴求である。A店では、「節分にいわしを食べよう」というキャッチフレーズで、「いわし明太子」や「生いわし」が並べられ、C店でも「節分はいわしたべましょう」として、いわし塩焼き、生いわしが展開されていた。

 また、B店では「巻き巻きスイーツ」として「恵方巻きロールケーキ」が展開されていた。こうした取組によって、「節分」が生鮮・総菜・デイリー・加工食品などに横串をさすように、大きな部門連動テーマとなっている。

 A店では、先の「節分にいわしを食べよう」という冷蔵ショーケース以外に、「恵方巻きネタ」を並べた6本の冷蔵ショーケースを展開している。

 生鮮での「催事展開」は、この時期の「鍋」テーマでより強化されている。

 「鍋」テーマを展開していたのはB・C・D店であるが、いずれも「たれ・スープ」との関連陳列を強化している。

 これまで「歳事テーマ」は、どちらかと言えば「加工食品メーカー」からの提案で実現することが多く、その売場展開も「加工食品」のウエイトが高かった。肝心の生鮮は、「旬」こそ訴求するものの歳事連動は、あまり活発ではなかった。

 しかし、既存店の活性化、特に「食品」の強化、その中でも「生鮮・総菜・デイリー」の強化施策が鮮明になり、「地域と季節・シーズン・歳事」展開が重要な「部門横断テーマ」として浮上してきている。

■国産・「地産」・「和」の訴求強化

 「輸入餃子」問題でゆれている時期の影響もあるが、「国産・地産」訴求が目立っている。

 節分・恵方巻き、鍋物に関連する生鮮食材のほとんどは「国産・地産明示」の食材である。鍋物テーマで展開されている青果・水産品には、ほとんど産地表示がなされていた。「節分にいわしを食べよう」と訴求されていたA店のいわしは「千葉県産」であった。

 また、国産志向とは直接結びつくものではないが、「和」の訴求も目立つ。先の「巻き巻きスイーツ」もそうだが、バレンタインでも「和様式」の品揃えが目立っている。特にA店では「京はやしや」、「和ショコラ」「滝見の茶屋」などの開発・品揃えを強化していた。

■食品売場でのヘルスケア

 まだまだ目立つ企画ではないが、食品売場で「イキイキ健康」、「生活習慣病予防」が実施されていることは注目すべきである。特に、薬事法の改正を狙って、「食とヘルスケア」の取組が注目される中で、GMS・SMとして「食のバランス」や「食育」、さらに「ヘルスケア商品」や「特保」を関連付けて、ヘルスケアにどのようにアプローチするかが注目される。

■目立たない「価格訴求」

 実は、この時期GMSの重要テーマは、メーカーの「値上げ交渉」を受けての「価格凍結宣言・PB値下げ」や「家計応援プライス」である。チラシにも、そのことが明確に宣言している。しかし、売場では、いつものような「大きな赤字のプライスPOP」は目立たない。「PB」ですら、「歳事テーマ」で括られており、「売価訴求」は薄れていた。

開発される「歳事需要」

 今年は、メリーチョコが日本で「バレンタイン」を始めてから「50周年」だという。「バレンタインチョコ」は 日本の商売人が生んだ風習である。節分の恵方巻きも関西の海苔商人がイベントで開発し、東上はセブンイレブンが寄与したと言われている。

 近年でも、節分・バレンタイン需要は開発され続けており、2月3日の節分の日に、家計で購入された「調理済寿司」は、年々拡大を続け昨年には、2人以上世帯(農林水産従事世帯含む)で、359円になっている。 バレンタインでは、2月8日から14日までの1週間で、1世帯あたり698円が支出されている。これも、年々上昇している。また、バレンタインは個人の「ギフト」、「ご褒美」が年々高くなっていると言われ、その市場規模は確実に拡大しているであろう。

 こうした金額が、どれくらい「普段の需要」を上回っているのかに関心があるところである。各年毎に、年間支出を365日(うるう年は366日)で割った、1日当たり平均と、節分の日(2月3日)の支出の落差を算出すると、「調理済の寿司」が、00年では「2月3日の支出」は「普段の支出」の5.6倍であったが、07年では10.5倍となっている。

 また、「いわし」は、00年は6.9倍、それが05年には10.8倍と高くなったが、この2年ほどでは逆に下がっている。今年、「節分にいわしを」というメッセージが増えたのは、この危機感からかもしれない。

 一方、バレンタインでは、先に見たように支出金額は増えているのに、「普段の消費(この場合2月8日から14日までの1週間で見ている)」は、00年7.7が、07年では6.9とやや下がっている。これは、「普段のチョコ需要がアップしてきている」からであり、「チョコの通年化」が進んだことによるものである。「バレンタインチョコ」の需要開発が、「普段の需要」を押し上げたと言えよう。

 その逆が「ネクタイ」である。バレンタイン期間中のネクタイの支出は、「普段の週支出」に対して、わずかだが年々上昇してきている。これはこの期間中の支出が増えていることにもよるが、反面「普段の支出」が減少していることが大きな要因となっている。いつの日にか、ネクタイは「バレンタインギフト」商品になってしまうのかも知れない。

開発される「生鮮・歳事商品」

 「がんばれ受験生」も、「開発された」歳事需要である。発端は「日本ネスレ」の「キットカット」が「きっと勝つ」の語呂合わせで人気になったことによる。近年、この「語呂合わせ商品」が各社から開発された。

 今年の「開発商品」を拾ってみよう。

  • * 栗山米菓、受験生応援商品「開運ばかうけ稲荷」「開運星たべよ」発売。
  • * 協同乳業、「ホームラン」シリーズに受験生応援パッケージ発売。
  • * ハナマルキ、即席味噌汁で受験生応援メッセージ
  • * フルタ製菓、受験生応援チョコ「合格セコイヤ」発売
  • * 亀田製菓、受験生応援サイト「合格するぞ!ハッピーターン」開設。
  • * 日清食品、「チキンラーメン」と「出前一丁」で受験生応援カップ。
  • * 江崎グリコ、「キッポーポッキー&携帯ストラップ」プレゼントキャンペーン実施。

 などである。また、すかいら〜くでは、期間中に人気の高い「ネスレ・キットカット」をプレゼントした。

 節分も「恵方巻き」にちなんだ「ロールケーキ」が開発されたことは先に述べた。「いわし」の需要を喚起するための「いわし明太子」も、こうした観点で開発されたのではないか。

 今年の売場で非常に注目すべきは「鍋フェア」でのネギである。C店の「今夜はお鍋」のテーマで、きのこ・青果が展開されている。最近ではよく見られる展開であるが、注目したのはネギで「茨城なべねぎ」「下仁田ねぎ」「埼玉ねぎ」「高知ネギ」の品揃えがあった点である。なぜ、こんなに「ネギ」がアッピールされているのであろうか?

 実は、今、ネギは「鍋物用」に新しく開発され、それが競争になっているのである。

 日本農業新聞では、昨年11月11日付けの記事で、「気温の低下とともに、鍋物向けのネギが店頭に出回り始めた。甘味が強い群馬産の下仁田ネギは有名だが、最近は鍋に最適とうたった新品種が参入。鍋を舞台にネギ産地がしのぎを削る。

 茨城県のJA岩井は3年前、下仁田ネギと通常の長ネギを掛け合わせた『鍋ねぎ』の販売を始めた。軟らかく甘味があり、『鍋に入れた時の存在感がある』と同JA。生産量は増加中だ。群馬県のJA碓氷安中も下仁田ネギの良さを取り入れ、価格を抑えた『上州ねぎ』をデビューさせた。

 迎え撃つ下仁田ネギは、これまでの贈答用中心から一般消費用にシフト。スーパーの店頭に鍋物用の食材が並び始める11月を狙って、『ここ数年、出荷時期を早めている』(JA全農ぐんま)。」と報道している。

 同じく12月1日付けでは、「兵庫県のJAたじま岩津ねぎ部会は11月25日、JAたじま特産『岩津ねぎ」』出荷を始めた。岩津ねぎは、寒さが増すほどとろみが出て甘味が増す。柔らかく、鍋物に最適といわれている。」、さらに12月15日では「広島市・白木農事研究会赤ねぎ部会は、今月上旬から出荷を本格化させている。赤ネギは茎の外側が赤いネギで、甘さと軟らかさが特徴。素焼きのほか、寄せ鍋やすき焼きなどの鍋物にも最適。」とも報道している。

 「鍋マーケット」は、こうした市場開発商品の開発が盛んである。近年では「キムチ鍋」の開発・市場開拓によって「エバラ・キムチ鍋の素」はロングセラーとなり、バイヤーアンケートでも「鍋部門NO1」に支持された。「桃屋・本格キムチ鍋の素」も評価が高い。さらに、今後については「カレー鍋」が期待され、永谷園のほか、フジッコや日本水産などが新製品を開発、カレー大手のハウス食品もメニュー提案を行っている。

 また、「キノコ」も「鍋戦争」がある。「ホクト」と「雪国まいたけ」の開発競争である。

 こうした動きを受けて、カゴメ、ホクト、ダイショーなどが『鍋物開発』でコラボレーションを組んだ。月1回の会合を重ね店頭販促を共同化するのが狙いである。

■「らしさ」の開発

 今年のバレンタインは、従来にも増して注目された。

 その関心は、6月に予定されている「東京メトロ副都心線」を巡る百貨店競争である。特に競争の的は「デパ地下=食品フロア」に集まり、著名シェフ、パティシエ、デリカの出展競争をあおっている。

 特に今年、世界の「ショコラティエ」が日本に集合した。

 特に有名なのが、新宿伊勢丹で行われるチョコレートの見本市「サロン・デュ・ショコラ」で、今年で6回目を迎え、13ヶ国、55人のショコラティアが集まったという。

 三越でも、「世界の洋菓子職人協会『ルレ・デセール』85名の会員中から、MOF(フランス最優秀職人)や年間優秀職人、クープデュモンド(洋菓子職人のワールドカップ)優勝者、スペイン王室・ルクセンブルグ公室御用達など選りすぐりの5ヵ国、9名のメンバーのチョコレートを詰合せた贅沢なセット」を発売した。

 こうした百貨店の展開や集客に、他の業態が対抗できる訳はない。

 昨年のCVSのバレンタインは、ちょっと異常であった。いくつかのチェーンは、「アラカルト社」が集約したショコラティエのシリーズ商品を扱った。監修は多少違うが、どのチェーンも同じような品揃えになった。しかし、「世界のショコラティエ」の展開が、CVSでかなう訳はない。

 結果は、どうだったか分からないが、今年の展開を見ると、「百貨店とバッティングする展開を避け、CVSらしさ」を発揮したと言えよう。

 昨年同様、「アラカルト社」の品揃えを踏襲したのはわずかであった。他はオリジナルな企画を投入した。

 セブンイレブンは、得意の「ベルギーチョコ」をオリジナルで開発しているが、中心は商戦前の需要を狙っての「お試し」にあった。大手メーカー各社の商品と、「生チョコ」でプレ・バレンタインの需要を狙った。

 ファミリーマートは「本命」「自分用」を分け、バレンタイン動機をコンセプトとした。「自分用」は、多分に「男の自分」であったかも知れない。

 ローソンは、オリジナルで勝負を掛けたが、展開アイテムは「菓子パン」であり、カジュアルデザートであり、クレープであった。「バレンタイン」そのものの購買動機ではなく、「普段着のチョコ」という感じである。

 サークルKサンクスは、昨年「差別的」であった、「和」を今年も継続した。ampmは、ローソンと同じように「普段着」を強化した。

 各社とも、昨年より大いに「カジュアル」になった。「普段着のチョコ」である。チョコレートが通年化している実態を、CVSという業態に当てはめた戦略かも知れない。

 GMS、SMでもその志向が見られた。特に、強化されていたのが「手作り」コンセプトである。バレンタインもそうであるが、節分・恵方巻きでも「手作り」が強調された。

 「らしさの展開」は、小売業だけではない。メーカーも、冷静に「自社が何者であるか?」を問いかけた上での展開と思われるものが多発している。

 バレンタインでは、

■明治製菓

 「“ピュアな想いを手作りチョコで伝えよう”をテーマに専用ホームページ、TVCM、売場を連動させ手作りチョコを提案する。月間、100万人を超える訪問数を誇る日本でナンバーワンの手作りチョコ専門サイトでは、初級、中級、上級ごとや贈る相手ごとにレシピを紹介するなど、分かりやすさ、使いやすさにこだわった。」

■ ロッテ

 「今年も“赤いチョコなら、ハートが伝わる”をテーマに「ガーナ」を使った手作りチョコレートを中心にバレンタイン市場を盛り上げる。」

■ 森永製菓

 「今年のバレンタインも、各世代に向けて同社のチョコレートブランドをあてはめる。10代の女子中高生には『ミルクチョコレート』を手作り需要用に、レシピ訴求をしていく。20代には、『ダース』を使った上質な手作りチョコを訴求する。“自分用”として『カレ・ド・ショコラ』を訴求する。さらに、ワンランク上の商品『カレ・ド・ショコラエルメホールレーチェ』を発売する。」などである。各社、「強さ」をより強調する展開を心がけていると言えよう。

 「鍋」でも同様である。「用途開発・市場創造」を得意とする「ミツカン・エバラ」は、どんどん新しい需要を提案し、商品を開発している。

 「精肉部門」と直口座をもつ、モランボン、日本食研は、生鮮での売場展開、クロスMDをより強化している。

 ホクト、雪国まいたけは、「生鮮企業」としては「大手」である。ホクトは400億、雪国まいたけは230億である。偉大な「農業企業」で、加工食品、生鮮とのコラボレーションの仲介役も担っている。

 精肉では、「アマタケ」がある。136億円の売上げだが、「三陸地鶏」という銘柄で、東北で初めて特定日本農林規格(JAS)の認定を取得した。ほとんどの「上質スーパー」との取引、鶏の加工、在庫をコントロールする企業として、コラボレーションでは重要な役割を発揮する。

 そして、先に触れたカゴメである。さらに、キリンビールがある。また、ミツカン、ハウス、味の素がある。日本で、一番の「生鮮メーカー」はキューピーである。「総菜・サラダ」で980億、「卵」で870億である。

 こうしたメーカーの、「らしさ」が生産地や、業態、各チェーンの特性に合わせた役割を担っている。

 エリア特性や、季節・シーズン、歳事対応に、自社のどんな資源が有効か、それによってどんな「差別的な市場開発」が可能か、単なる「歳事プロモーション」ではなく、市場開拓・拡大の武器として、さらなる「らしさ」の戦略を強化しなくてはならない。

 5月にはふたつの歳事がある。「子供の日」と『母の日』である。「少子高齢化」に習えば、前者は衰退し、後者は成長する。ただ、「市場創造」の鉄則に習えば、また、差別的な需要創造が可能である。