トップページ
サービスメニュー
営業力開発誌
JMR戦略ケース研究会

→活動内容とサービス
→過去のテーマ(東京)
→過去のテーマ(大阪)
→顧客接点レポート
→お申し込み

セミナー
会社案内
リクルート
お問い合わせ
JMR生活総合研究所

買上点数向上と選択の手がかり

 

値上げ時代の競争構造

多くの加工食品の値上げが報じられた4月、その購買実態が注目された。 2人以上の一般世帯の消費支出は、名目で1.7%のマイナス、実質では2.7%のマイナスである。値上げと政治の混迷、年金・後期高齢者医療の不安が巡った3月に次いで連続、名目・実質減少である。

食料に至っては名目で-1.2%、実質で-3.1%である。明らかに、値上げ・将来不安による消費抑制が効いている。 一方、小売では、大手が加盟しているチェーンストア協会が、店舗調整後-0.8%、食品では1.3%増であった。エリアSMが多いスーパーマーケット協会では既存店でマイナス0.1%、食品では1.7%増であった。 フランチャイズ協会が発表しているコンビニエンスストアでは、既存店でマイナス0.2%、客数は0.7%増加しているのに、客単価が-0.8%であった。

外食のフードサービス協会では、既存店で3.8%のマイナスで、客数が-3.9%と客離れが目立った。好調であったファーストフードですら久しぶりに2.3%のマイナスとなった。

全般的には、「サービス」にきつく、小売店では微減という状態であったが、確実に消費は減退傾向にある。 業態全体としてはマイナスになったコンビニエンスストアではあるが、ファミリーマートでは既存店で5.4%の増収、ローソンでも5.6%のプラスとなっている。この現象を、「外食」から離れた顧客が、コンビニエンスに集まったという論説もある。

値上げ時代の競争構造は、単純に製品カテゴリー内でのシェア競争ではない。特に食品では、自社の食材が使われる「メニュー」の登場頻度が高くなくては、成長は見込めない。「登場頻度」という面では、「外食」も「中食」も、「内食」も、同一の土俵である。現代の消費抑制は、「外食」でのメニューではなく、コンビニエンスストアでの「メニュー」にシフトしたのである。

さらに、「食を巡る競争」は「流通業」対「製造業」という図式も生んだ。流通業のPBは、この消費抑制の時代で急速に伸びている。「価格競争」のレベルでは、PBの許容度は一挙に高まった。

NBとしては、「価格」だけではない「選択の手がかり」を提供することが使命となる。 それが、「メニュー提案」である。この活動は、小売業にとっても、重要な「業態・チェーン・店選択」に勝ち残る手段となっている。 値上げの時代、顧客の購買行動で一番怖いのは、「買上点数の減少」である。それを払拭するのが「メニュー提案」のもうひとつの課題である。

「メニュー提案」の受容性

メニュー提案が、生活者にどのように受け入れられているか、どれだけの成果があるのかは気になるところである。営業内部でも、チェーンの本部でも、「数字を稼ぐには、細かすぎる、やはりエンドの大陳で、価格訴求でなければ」という主張は根強い。

日本食肉消費総合センターでは、食肉の購買行動と「メニューチラシ」の受容性についての調査を実施している。 07年6月の調査では、「メニューチラシを入手して、そのメニューを作ったことがある」生活者は51.8%に登っている。注目すべきは、年収の高い世帯ほど受容性が高いという点で、「年収1000万以上」の世帯では、「メニューチラシを入手して、そのメニューを作ったことがある」のは57.5%となっている。「年収300万未満」のそれは、43.9%に留まるとしている。

一般的に、生活者が商品の購入を決定するのは、「店舗で商品を見てから」という、「非計画購買」の特徴が指摘される。日本食肉消費総合センターの調査では、「精肉」においては、29.4%が「最初から決めていた」、13.1%が「家でチラシを見て決めていた」となっており、全体では42.5%が「計画購買」となっている。食品全般と比較すれば、かなり「計画購買」の率が高い。

注目すべきは、顧客が「いつもより安く買えた」と感じている場合は、「店で特売だったから買った」という率が高いが、「いつもより高くついた」とする場合は、「最初から決めていた」という「計画購買」と、「店でメニュー提案を受けて」と「店で商品を見て」という、「非価格以外の」「非計画購買」の態度である。(図表1・2参照)

【図表1】精肉購買の計画性
【図表2】購入価格と計画性

「いつもより高くついたが」「最初から決めていた」とは、「メニュー」を決めていたと考えるべきだろう。「ストック」のために買うのではなく、今晩のメニューのために、いつもよりは良い肉を買うつもりで店に行っている。 さらに、店舗でメニュー提案を受けて、そのメニューなら多少高くても、良い肉をと意志決定したのであろう。結局、どんな肉を買うかは、メニューが想起される場合には、「多少高くて も良い肉を・・」と判断される場合が多いということになる。

これが、メニュー提案の狙いである。生活者は相次ぐ値上げで、再度価格に敏感になっている。しかし、先の「デフレ経済」で学んだように、「価格」は長期的にはチェーン・店舗・ブランドの差別化戦略とはならない。「価格が安いから」と言って、チェーン・店・ブランドのファンになってはくれない。 「価格に敏感になってきた」からこそ、「価格以外の」要素で選択されるコミュニケーションが必要となっている。その有効な手段としてメニュー提案がある。

小売業の取組み

メニュー提案は、メーカーのみならず、小売企業自らの取組課題となっている。「クッキングサポート(イトーヨーカドー)」あるいは「クッキングステーション(イオン)」はその代表的な手段である。

これまで、店頭での対面的なメニュー提案は「マネキン」が中心であった。メーカーから派遣された「マネキン」が簡単な器具を使って調理し、試食を勧めていた。「メニュー」を提案すると言うより、メーカー商品の宣伝がメインで関連販売的な視点も乏しかった。「クッキングサポート、ステーション」は、その名の通り、「クッキング=調理」を提案するのが狙いで、紹介する食材も豊富である。現在では、ほとんどのチェーンで採用している。

イトーヨーカ堂では、「クッキングサポートコーナー」を全店に稼働させる計画、さらに、メーカー主導であった「マネキン」もイトーヨーカ堂が内容を企画し、マネキン会社に依頼する形式に見直しを進めている。メーカーは自社商品を使ってもらうために費用を負担するという形をとる。「クッキングサポート」「マネキン」を、テーマ、メニューで連携するのが目的だといわれている。

小売企業のメニュー提案のもうひとつの武器は、チラシである。これまで「特価」ばかりを強調したチラシから、近年ではシーズン、歳事をテーマに、その時々の食卓メニューを訴求している。例えば6/13のジャスコのチラシは、タイトルが「やさしい気持ちといっしょに贈ろう。みつけました。父の日ギフト」である。

食品面は、「大好きなごちそうで、お父さんも笑顔に」として、お刺身、お寿司、オードブル、ステーキ、焼肉の掲載があり、アトランサーモンの野菜盛り、4種類の魚介の野菜盛り、8種の海鮮太巻きなどのメニュー提案がある。 イトーヨーカドーも、「父の日の食卓」がテーマで、ローストポークのおつまみサラダ、牛もみタレバラカルビ焼肉、わら焼きかつおたたきなどの具体的なメニューが訴求されている。

1年間のメニューに関するチラシテーマをチェックすると、季節、歳事にキチンと対応していることがよく分かる。 先行商談として考えれば、7月は「夏」がテーマで、ベイシアでは「夏に負けない元気メニュー」として「うなぎ・うし」の訴求がある。

8月なら、「夏バテ予防の健康」がテーマで、ヤマナカでは「健康食生活応援メニュー」として、釜飯のメニュー提案がなされている。 売場展開についても、「メニュー」を意識した展開がある。特にクロスMDの浸透にはめざましいものがある。また、エンド展開でも、単に売上が大きい商品を前面に出すのではなく、メニューとしてのバリエーションを発揮する関連品を強調している。

ヤオコーでは、「涼味」のエンドで、これまではそば、ソーメンを前面に出していたが、メニューを意識して削り節や海苔、つゆ、薬味を前面に出したところ、関連品が4割増す、乾麺が5割増という実績を上げたと報告されている。

6月の店頭でのメニュー提案

量販店でのメニュー提案の実態を5店舗でチェックした。 「涼味」の提案は、多くのチェーンが6月からスタートさせている。A店では「天かす」も関連陳列している。メーカーではキッコーマンの「そうめんつゆ、ざるそばつゆ、本つゆ」の露出が多かった。

同時に、メニューとは言えないかもしれないが、すべての店舗で「梅酒フェア」を展開していた。生梅やしそ、ホワイトリカー、ブランデー、氷砂糖までの展開である。出来上がった梅酒そのもの陳列も見られた。梅酒と一緒に「らっきょ漬け」の商材も展開されている。 5店舗中、3店では入り口すぐのエントランスでコーナー展開をしており、この時期の最注力テーマであることが分かる。

純粋なメニュー提案としてポピュラーなのが、メニューレシピを各売り場に設置する方法であるが、店舗によってバラツキがあった。最も、レシピを数多くの売場に設置していたのがA店であり、メニューカードが50種類前後あった。各棚にメニューカードを差し込むプレートが準備されており、メンテナンスの大変さがうかがえるが、各プレートとも十分な枚数が補充してあった。

B店もメニューカードの種類が多いが、この店ではエントランスに「今週のおすすめメニュー」が掲示してあり、そのレシピが売場と連動している。さらに、魚をさばいてくれるコーナーがあり、その周囲に各種の魚のさばきかた、焼き方、煮方を説明しているカードが20種類ほど設置していた。

のこりの3店舗では、レシピカードよりは「クロスMD」によるメニュー提案の方を充実させていた。 C店では、クッキングサポートコーナーにレシピを集約していた。また、そのコーナーに隣接して、スパイスコーナーがあり、そこで「スパイスを使ったいろいろなメニュー」がレシピで提案されていた。このレシピを作成したのはエスビーである。

このC店で強化されているのがクロスMDである。生鮮売場に、モランボンやダイショー、日本食研のメニュー調味料が関連陳列しているのは、今やどの店舗でも見かけるようになったが、このC店では、

■チーズ売場の前で、木のボックスに 入れたワインを展示している
■ハム、ソーセージの売場の前のワゴ ンに、ホットドッグ用のバターロール(パン)を置いている。
■うなぎの蒲焼き売場に、長芋そのも のを置いて、「うなトロ丼」を勧めている。
■野菜の大根の売場の脇に、「なめ茸」 を置いて、「おろしなめ茸」を提案している。
■酒類の売場には、目立つ場所に「ウ コンの力」があり、各酒類ごとに「おつまみ」が関連陳列されている。

さらに、クッキングサポートコーナーや、生鮮売場には実際に調理したメニュー(実物)が置いてあった。

D・E店でも、メニューレシピよりはクロスMDが多用されていた。この2店舗で関心をもったのが、(チェーンは異なるのだが)D店では、「魚河岸三代目タイアップメニュー」があり、E店では「魚河岸三代目登場メニュー」があったことである。 コミック誌で人気の「魚河岸三代目」にならって、鮮魚売場にPOPとして掲示してあった。「食」が「情報」であることの証明であるような売場であった。

メニュー提案場所としての「生鮮」

メニューレシピの設置にせよ、クロスMDの展開にせよ。その売場は圧倒的に「生鮮」である。「惣菜」での告知も多いが、惣菜も「生鮮」の仲間である。逆に言えば、グロサリーの定番には、ほとんどそれらしき提案は見られない。

確かに、食品売場における生鮮コーナーへの立ち寄り率は、ドライグロサリーを圧倒している。また、「生鮮」を見て今晩の献立を考えるのであって、調味料を見て決める訳ではない。その意味で、メニュー提案の場所が生鮮売り場に集中することは理解ができるが、それにしてもドライグロサリーの定番が寂しすぎる。 メニューレシピ、クロスMDといっても、全ての食材に提案をつけることはできない。また、そのメニューの関連ドライを選択する場合、必然的にドライグロサリーの売り場に足を運ぶことになる。

ただし、一般にドライグロサリーへの立ち寄り率が低いため、何度言っても目的の商品の売り場が分かりにくい。その「売り場サイン」として、あるいは生鮮での展開の連動として、ドライグロサリーにもう少しの「メニュー提案」があっても良い。

B店では、エントランスに告知した「今週のおすすめメニュー」を、それに使うドライグロサリー商品の売り場に、突き出しPOPとして告知している。

D店では、エンドで展開されている「涼味」のつゆで主導的なキッコーマンのレシピが、定番のつゆ売り場に7種類のレシピが設置してあった。

いずれも、提案メニューを軸として、売り場連動をしている。こうした連動、例えば生鮮売り場とドライ定番、エンドと定番、エントランスと定番のような連動がもっとあった方が、「非計画購買」はより促進されるであろう。

メーカーコラボレーション

売場に設置してあるメニューレシピで、いくつか注目するものがあった。 D店で、「私の一人鍋レシピ」とい う鍋物の提案レシピがあった。制作は青物物健康推進委員会である。 通常、提案されているメニューは4人用でレシピが作られている。いわゆる「両親、子供2人」の「標準モデル」である。しかし、このモデルはとっくの昔に崩壊している。

「単身」「夫婦のみ」「親子核家族」に3分割され、それぞれに「50歳以上」の中高年世帯が半分を占めている。いわば、3つの世帯累計×世帯主世代:「青年層」「中高年層」の6つの家族類型に分解しているのである。

食品スーパーが子持ち主婦が主客層としても、高齢者単身は無視できないボリュームに拡大されており、「結婚しない・できない生涯未婚」もスーパー客層に近い年齢となっている。1人用は確実にスーパーの「レシピ」である。

B店には、きのこのレシピが棚に設置してあった。きのこレシピは「ホクト」「雪国まいたけ」が作成しているが、このレシピは「雪国まいたけ」である。この会社は、味の素や大手食品メーカーとのクロスMDでブランド化されたきのこメーカーである。

このレシピには、「きのこの鮮度を守るためにキッチンシートで保存するように説明してある。このシートは「クックアップ」というユニチャームのシートである。いわば、雪国まいたけとユニチャームのコラボレーションの訳だ。

A店では、同じようにきのこのレシピが設置してあったが、その中で「きのことトマトのマヨたま炒め」というメニューレシピがある。使う食材はぶなしめじと、トマト、卵、メニュー調味料である。制作は、カゴメ、ダイショー、ホクト、ヨード卵となっている。 この組み合わせ、今年1月に共同販促研究会を発足させたメンバーである。

さらにA店では入り口近くのシマにコカコーラ製品の大陳があった。そのプレミアムとして、「マンゴーチャツネ・炒めたまねぎ・ターメリックライス」という専用調味料があり、いくつかにはカレールー「こくまろ」が添付されてあった。

「こくまろ」はハウス食品であり、ほかのものも「カレーパートナー」という同じハウス食品の商品である。コカコーラ、ソフト飲料とカレーメニューの組み合わせ、食卓のある場面を想定したものかも知れないが、大手メーカー同士のタイアッププロモーションである。 昨今のハウス食品は、このようなコラボレーションに注力している。今年の母の日にはロッテとコラボレーションしている。

D店でも、ハム・ソーセージショーケースの中に、「ドライ×DRYキャンペーン」の告知POPがあった。プリマハムの「十勝シリーズ:DRY」を購入して、アサヒのSUPER DRYを当てようというキャンペーンである。ビールとそのつまみとしてのソーセージのメニュー提案である。

これまで見てきたように、メニュー提案は、小売業とメーカー、そしてメーカー同士の協働によって成立している。「食」は25兆円を超える大きなマーケットであり、しかも各カテゴリーのシェアトップは各々異なっている。1兆円を超える食品メーカー、例えば味の素は連結で1兆2千億円であるが、シェアトップは調味料のいくつかのカテゴリーにとどまる。いわば、食品メーカー、関連企業、小売業ですら「部分」にすぎない。

そのいくつかの「部分」が結集して「メニュー」が構成されている。メニュー提案というテーマに対して、こうした協働が進んでいることは、顧客を軸としたマーケティングが進んでいることとして、今後に期待する。