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新しい消費者を理解する法則

経済・社会情勢に経営体系をあわせて一息つこうとした矢先、金融面からまたまた大激震である。その対応にあくせく。息つく暇もないといった感じである。

企業だけではなく我々生活者もそうである。将来設計上、安心感が得られない状況である。では、生活者は具体的にどのような価値観のもと、何を求めて生活してるのであろうか。そして消費行動への影響はどのようになっていくのか。

開MRサイエンスでは、2000年より毎年「消費者の生活価値観・消費行動調査」を実施してきた。2008年度調査もこの11月に終了した。ちょうど、この時期はサブプライム問題を発端とした、様々な危機現象が表面化していっている状況下での調査となった。その後にも、さまざまな危機現象が表面化してきているが、初期の時期でもあるので、今後の消費を予測していく上では、大変参考になるデータが収集できたと考えている。

本稿では、ターゲットを判別できる「軸」とその活用方法を提案させていただいている。弊社が開発した「軸」で分類したライフスタイル・クラスターを紹介するとともに、それぞれの消費価値観・消費者行動がどのようになっているのかを時系列データも踏まえて紹介している。

まず紹介しているのが「女性のライフスタイル」の全体像である。続いて「生活時間とメディア接触」「家族のつながり」「育児・教育観」そして「男性のライフスタイル」である。

尚、本稿は、開MRサイエンス ネットライフ総研「自主研究調査データ」をもとに、分析を竹重美咲が担当。執筆は、志賀俊信、田川元也、糸崎直美、新藤愛、佐々木知美、池添久美子、監修は、川島隆志によるものである。

ターゲットを判別する軸
1. 開MR サイエンスの考える消費者分類軸とは?

◆消費者分類軸の必要性

マーケティングリサーチが社会調査と異なる点は、「マーケティングリサーチには(想定)ターゲットという概念がある」という点である。ターゲットを決めるには、ターゲット適性のある生活者と、ターゲット適性の無い生活者を分けるための判別「軸」が必要となる。

“消費の多様化”が唱えられ始めて久しいが、消費者の嗜好性は、年々多様化・細分化する一方であり、企業はその嗜好性に適合させた商品開発を迫られている。また、インターネットの登場は情報の流れを大きく変え、企業サイドの発信というよりは消費者サイドの情報発信により口コミが広まるケースも出てきている。

さらに、ライフコースも多様化、晩婚化や晩産化により家族形態も変化、いわゆる「核家族」も減少し、その結果、典型的な家族消費のあり方も変容している。

以上のように変容していく生活者の実態を把握するには、従来の性別、年代といったような基本属性だけでは充分でなく、他の分析軸も追加した上で、ターゲット適性のある消費者とターゲット適性の無い消費者を判別する事が望ましいと考える。開MRサイエンスでは、2000年より行っている消費者の「価値観」に焦点を当てた自主調査研究や、クライアント様との課題解決を通じて、様々な分析軸の開発を行ってきた。自社商品の本当のターゲットは一体どんな消費者なのか?その消費者は一体どのような商品を求めているのか?といったような課題解決を可能にする。開MRサイエンスの開発した分析軸について、以下、ご案内をさせて頂く。

2. ターゲティング軸データベース

通常企業が実践するデータベース・マーケティングは、消費者の属性など基本情報と、購買履歴を踏まえた上で、次の購入予測とコミュニケーション戦略の一環として利用される事が多い。

一方で、開MRサイエンスの考える“ターゲティング軸データベース”は、基本属性、所有品など、消費者モニターが持ち合わせる基本的な情報以外に、生活意識や価値観、生活行動といった生活の根底を彩る情報も分類軸として取得し、これら付帯情報も同時にフラグ付けを行い、データとして格納、様々な商品・サービスの想定ターゲットを判別する際に活用していただいている。

現在、開MR サイエンスが個々の消費者モニターを分類するのに保有している軸(情報項目)は、以下の通りである(図表1)。

(1)生活像
社会構造の変化を受けて変容していく消費者の価値観を理解する為に、
  • 消費者の生活意識や生活構造、及び特定の商品領域での生活行動
  • 衣食住の生活基本要因から分類された“ライフスタイル”ごとのクラスター情報
(2)消費像
消費者の購買に至る様々な意思決定要因として、
  • 特定の商品ジャンルに対する情報感度、採用性向やこだわり
(3)選択・購買像
商品について、実際の選択から購入までを含んだ購買行動として、
  • 消費行動、購買行動、買い物行動

消費者の価値観を理解するのには消費者の生活像を理解する事が重要であるため、(1)の生活像の理解という観点から過去に研究開発を進めてきたが、現在では新商品に対する評価や採用性向などに関する(2)の消費像、そして消費パターンや接触しているメディア内容、および購入チャネルに関する意識と内訳に関する(3)の選択・購買像などに関しても「軸」データベースとして保有している。(2)の消費像の情報感度や採用性向については、別途自主研究にて検証を行っている最中でもあるので、機会があれば、別途ご案内させて頂きたい。

【図表1】ターゲット像を描くフレーム体系

◆判別軸データベースのメリット

このような判別軸を利用できるメリットとしては、どのような点があげられるだろうか?

まず、1つ目のメリットとして、消費者理解度の向上、という点が挙げられる。モニター情報を保有しようとした場合、性別、年齢、家族構成、学歴、所得、所有品、生活パターンなど、様々な項目でのヒアリングを行うケースが多いが、収集した調査項目自体は、それぞれが独立していて、項目間の関連性というのは、なかなか説明が困難である。

例えば、“ベンツ所有者”という消費者を考えてみる。世帯年収1,500万円以上の消費者はベンツを所有している、ということは、“世帯年収”という要因である程度の説明が可能であるが、世帯年収が500万円以下の消費者がベンツを所有している、ということは“世帯年収”という要因だけでは説明するのが厳しくなる。

同様に、“UNIQLOブランド常用者”についても考えてみる。世帯年収が500万円以下の消費者がUNIQLOブランドを常用していることは、世帯年収がある程度の説明をすると考えられるが、世帯年収が1,500万円以上の消費者がUNIQLOブランドを常用しているというのは、世帯年収以外の別の要因を考慮しないと説明するのは難しくなる。

以上に挙げた2 つの例は、多少極端な例であるとは言え、消費者が商品選択を行う際、彼らは何かしらの生活意識や価値観、消費パターンに基づいて商品選択を行っているのは事実である。そこで、この生活意識や選択・購買像といった項目を通して消費者モニターの情報を見た時、独立して見えていたそれぞれの調査項目が、初めて関連性を持ってひとつの塊りデータとして見えてくるのである。その為、より現実に即した消費者の生活像を理解することが可能となる。

2 つ目のメリットとしては、より具体的なSTP(Segmentation,Targeting,Positioning)が可能となる点が挙げられる。生活者像がよりリアルに把握できれば、彼らのプロファイル、ペルソナもより深く理解することができるため、より具体的なターゲット顧客の絞り込みが可能となる。

“30代の女性”を例にとって考えてみる。高級美容品を“30 代の女性”に販売しようと考えた場合、“30 代女性”の中にはこの美容品を“必要とする女性”と“必要としない女性”が混在している訳で、この両者を判別する際、性別や属性など、基本情報以外の生活者像分類軸を活用することにより、より具体的なターゲティングを行うことができるのである。

3 つ目のメリットとしては、ターゲットへの効率的なアクセス、という点があげられる。開MRサイエンスでは基本属性以外にも、消費者モニターの一人一人に生活像や選択・購買像といった付帯情報を割当て、常に運用をしている。 そのため、絞り込んだ上で選定されたターゲットに対し、簡単にアクセスすることが可能であり、その結果、具体的なターゲットからのフィードバックを直接入手することが可能となるのである。

◆判別軸データベース・リサーチの活用方法

開MR サイエンスの考える判別軸データベースの活用目的が“消費者の効果的な分類”であるため、クライアント様に提供できる活用方法は、“効果的なターゲティング”となる。P34で詳しく後述するが、効果的なターゲティングは商品開発、サービス開発の全ての段階において必須である。言うまでもなく、ターゲット適性の無い消費者をターゲットに定めてしまえば、開発する新商品、新サービスは結果的に失敗するリスクが高くなってしまうからである。

尚、この“消費者分類”に関するノウハウは、開MRサイエンスの消費者モニターのみに適用するわけではなく、ご要望があればクライアント様が所有している顧客データベースの分析にもご提供させて頂くことは可能である。

以上述べてきたように、開MR サイエンスでは、この生活像や選択・購買像といった付帯情 報を基本属性の他にも保持することにより、様々な角度からの消費者分析に対応している。この付帯情報のメインとなっている”ライフスタイルクラスター”については、以下のページで詳細に説明をさせていただく。

(志賀 俊信)


※本提言論文は、「営業力開発」誌 2008・No201号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:JMRサイエンス)へ掲載されています。
なお誌面では以下の様な全体構成になっています。

U.2008年の消費者像 女性のライフスタイル
V.生活時間とメディア接触
W.不安な社会における家族のつながり
X.育児・教育観
Y.男性のライフスタイル
Z.ターゲティング軸データベース活用


 
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