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日本型マーケティング3.0―進化する価値観に適合、未来を切り拓く―

社会・経済・政治いずれの世界においてもパラダイム・シフトが起こっているようである。最近の書籍をみるとやたらに、2.0や3.0といった文字が目立つ。例えば、問題解決2.0、感動3.0、Captalism4.0などである。
  マーケティングの分野では、フィリップ・コトラー等が「マーケティング3.0」 (2010)を提唱してきた。ソーシャル・メディアの浸透、中国やインド、インドネシアの台頭、そして迫りくる環境問題などにより、外的環境は大きく変化、それへの抜本的対応を迫られているとしている。
  営業力開発No.205(2009 Vol.4)でコトラー等「CHAOTICS」(2009)を紹介したが、その進化したものと捉えることができる。

  弊社では、「生活定点調査」を、インターネットが台頭してきた2000年から実施、生活者の「基本的生活観」「仕事観」「結婚観」「幸せ観」「ライフコース」など様々な視点で、分析を続けてきた。
  本稿は特に、ネットに関わる行動について紹介していくことにした。まず、インターネットの普及やその使用状況をみている。次に、ソーシャルメディアのユーザースタイル分類を試みた。今後のマーケティングを考えていく上では、非常に役立つセグメントができたと考えている。
  最近話題となっているネットスーパーにも触れながら、生活意識や消費意識・買物意識の変化もみている。
  最後に、次世代マーケティング構築のための様々なサービスを紹介している。
  なお、本稿は、(株)JMRサイエンス、川島隆志、竹重美咲、新藤愛、朴海燕、小林晃、池添久美子によるものである。


21世紀型マーケティング

1.マーケティング3.0 とは…

われわれマーケターにとって最も大切なのは、市場を見る目を養うことである。そのためには、市場をどのような視点でとらえていけばよいかというフレームワークを頭に叩き込む必要がある。
そのフレームとは以前からご提案させていただいているフレームである(図表1)。

消費者理解のフレーム・マクロ視点(図表1)

それは社会・経済・政治動向および企業活動の影響を受けたブームなどマクロの視点と、そのマクロの視点を踏まえて消費者がどのような行動を起こして、自分たちの「幸せ観」を実現させようとしていくのかといったミクロの視点が必要である。
  コトラー等は、マーケティング3.0は「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」で構成要素されているとしている。
  情報テクノロジーの進化によるソーシャルメディアの台頭により、消費者参加の時代になり、「協働マーケティング」が一つのキーであるとしている。
  また、グローバル化が進化することにより、パラドックスな課題が様々、起こっている。例えばモノやサービスや人が自由に移動できるようになったが、一方で自国をグローバル化の影響から守ろうとするナショナリズムが強くなるといったものである。それへの対応として「文化マーケティング」がキーであるとしている。
  最後にあげているキーが「スピリチュアル・マーケティング」というもので、直感的に理解が難しい概念であるが、消費者の価値観がより「人間らしい生き方」「創造的な生活」に向かっていることへの対応としているようである。


2.日本型マーケティング3.0を考える

コトラー等はグローバルな視点で市場・消費者をみて、このコンセプトを創出している。グローバルの市場状況は「2009営業力開発Vol.205」で紹介しているので参照していただきたい。
  本稿では、特にテクノロジー進化によって国内の消費者がどのような変化を遂げているのかを見ていくことにする。
  中でも、ソーシャルメディアのユーザータイプやネットスーパーの使われ方、生活意識の経年比較などは、示唆に富んだものであると確信している。
  今後のマーケティングを考えていく一助になれば幸いである。

(川島隆志)

変革し続けるインターネットの世界

1.インターネットの普及や環境の変化

2010年はインターネットの世界にとって、一つの区切りとも言える年となった。
  「i-Phone」を筆頭にスマートフォンが好調にシェアを伸ばし携帯端末の在り方が大きく変化した。
  また、2008年に日本に上陸した「twitter(ツイッター)」が急成長、今や「つぶやく」という言葉の流行とともに、ソーシャルメディアのひとつとして大きな存在になった。
  総務省の情報通信白書のデータによれば、人口に対するインターネットの普及率は2000年(H12年末)当時が約4割であったのに対して、2009年(H21年末)では、約8割へと急増(図表1)。ブロードバンド回線の普及と相まってインターネットを快適に使用できる環境が整った。

インターネット利用者数及び人口普及率の推移/ 個人(図表1)

様々なネットショッピング、映画やテレビの視聴、双方向ゲーム、飲食店やホテルの評価サイト、写真を多用したブログ、「YouTube」のような動画投稿サイトから「2ちゃんねる」のような落書き掲示板まで、もはや私たちの生活になくてはならない存在となったインターネットであるが、それでは2010年現在、インターネットはどのように活用され、あてにされているのであろうか。
  前述の「twitter」や日本最大の会員数を誇る「mixi(ミクシィ)」、携帯電話向けの「GREE」「モバゲータウン」などのSNSのみならず、掲示板や動画共有サイトまで、順調に会員を伸ばしている“ソーシャルメディア”に焦点を当て、その実態に迫る。

2.ソーシャルメディアの利用実態

まず、利用したことのあるソーシャルメディアを総務省調査で見てみると(図表2)、「ブログ」が77.3%で最も多く、次いで「動画共有サイト」「掲示板」が続いている。今年最も話題になったtwitterなどの「マイクロブログ」は30.9%となっており、後発ながら上位に食い込むなど、急伸していることが分かる。

利用したことのあるソーシャルメディア(図表2)
  そこで今回は、ソーシャルメディアの中でも、特に利用率の高い「ブログ」及び「掲示板」、今後更に伸びていくことが期待される「マイクロブログ」にフォーカスして、弊社の2010年自主調査の分析を行なった。

ソーシャルメディアの利用目的(図表3)では、「ブログ」及び「マイクロブログ」、「掲示板」のいずれにおいても、利用目的の上位に「新しい情報を入手」と「暇つぶし」が入っている。

ソーシャルメディアの利用目的(図表3)

  メディア別に特徴的なものとしては「ブログ:日記をつける」、「マイクロブログ:面白い考えや意見を知る」、「掲示板:幅広い情報に触れる/効率よく必要な情報を得る」となっている。
  ブログが「日記をつける」という自己完結型のメディアとしての特徴を持つのに対して、twitter などのマイクロブログでは「面白い考えや意見を知る」を含めて「暇つぶし」的要素が極めて強いことが分かる。
一方、掲示板では「新しい情報を入手」が突出しているのと併せて「効率よく必要な情報を得る」が上位に上がっており、今日の情報生活において、無いと不便を感じるような不可欠な存在となっていることが分かる。

書き込む内容については(図表4)、ブログは「日常の外出先について」「料理・食事について」「レジャー・旅行について」が上位に挙がっている。
マイクロブログでは「日常の外出先について」「ニュース・事件について」「その他の(自分の)趣味について」となっている。
一方、掲示板は「ニュース・事件について」「その他の(自分の)趣味について」「商品やサービス・お店について」となっており、ブログが自己記録などの日記的要素が強いのに対し、マイクロブログでは日記・趣味・ニュースと多彩である。
一方、掲示板は趣味と併せて、時事ネタや世間の評判など井戸端会議的な口コミ要素が強くなっている。

ソーシャルメディアに書き込む内容(図表4)

これらを踏まえて各々のソーシャルメディア利用後の意識・行動の変化を見てみる(図表5)。

ソーシャルメディア利用による意識・行動の変化(図表5)

まず“情報収集と情報発信”両方の側面で活用される傾向が強い「ブログ」については、「参加者との仲が深まった」「新たにWeb上で記事・画像などを検索した」「内容の商品・サービスを購入する候補として検討した」などが上位にあがっている。
コミュニティとして、また情報連鎖機能として、さらに商品の購入検討材料としても機能している。
  “情報収集”の側面で活用される傾向の強い「掲示板」では、利用後の行動として「新たに企業のHPを見た」「商品・サービスの購入候補として検討した」「商品・サービスを購入した」が多くなっており、「HPへの誘導⇒購入検討⇒購入」という、一連のマーケティング活動に繋がっていることが分かる。
  一方、急成長の「マイクロブログ」は、「参加者との仲が深まった」だけが際立って突出している。
注目度は大きいが、現実にはまだ軽いコミュニティ機能に留まっているこのソーシャルメディアを、このまま暇つぶしとして、終わらせてしまうのか、或いはマーケティング活動に昇華させるのか、各業界・各企業にとっての腕の見せどころとなるであろう。
  それでは、「ブログ」や「掲示板」で“検索”した商品は、一体どこで購入しているのであろうか。
その市場規模を拡大しているインターネットショッピングの現状をリアルの店頭と比較分析する。

3.インターネットによるショッピング

総務省調査でも分かるとおり、インターネットショッピングへの年間支出総額は着実に増加傾向にある(図表6)。

インターネットを利用した1世帯当たり1 ヶ月間の支出総額(図表6)

そこで、リアルの店頭とインターネット、各々で何を購入しているのかを確認した(図表7)。

商品購入場所【リアル店頭/ インターネット】(図表7)

リアルの店頭での購入が主となる商品は「食品」「日用消耗品」「洋服」「靴」「家電製品」などとなっている。
一方、Web購入が主となる商品は「国内・海外旅行( パック旅行)」「CD・DVD」「健康食品・サプリメント」となっている。
リアルの店頭とインターネットのいずれも多いのは「書籍・雑誌」「パソコン」となっている。

次に、購入理由について見てみると、店頭購入の場合は、「現物を確認できる」や「購入後すぐ商品を使えるから」が上位に挙がっている(図表 8)

店頭で購入する理由(図表8)

一方、Web購入の理由には、「Webの方が価格が安い」や「(自分の都合に合わせて)いつでも買物ができる」などが上位に挙がっている(図表9)。

インターネットで購入する理由(図表9)

全体の3割を越えるような多数派の理由では、店頭は「現物を確認できる」「購入後すぐ商品を使える」の2つの理由に限られている一方で、Web購入では「Webの方が安い」「いつでも買える」「外出の手間が省ける」「品揃え豊富」「ポイント利用可能」「Webでしか買えない商品がある」「持ち帰りの手間が省ける」など様々な理由が挙げられている。
  全体の結果を俯瞰しても店頭を支持する理由にはWebへの苦手意識やネガティブ意識からくるものは極めて少ない。
決してWeb嫌いでリアルの店頭を利用しているのではなく、リアルの良さを認めて敢えて利用していることがわかる。
対してWebを支持する理由としては、リアルの店頭にはない様々なメリットを大勢の人が感じていることが分かる。
 すなわち、≪リアルvsインターネット≫という対立した構図ではなく、リアルの良さは重視しながら、同時にインターネットの良さをどんどん取 り込んで消費者が進化している時代に入ったといえるだろう。
その背景に、充実するインフラ環境はもとより、ソーシャルメディアを中心とした積極的な情報収集・発信行動がインターネットショッピングに大きな影響を与えていることは紛れもない事実である。

4.今回のテーマについて

 インターネットの急速な普及に伴い2000年より 経年実施している、JMRサイエンスのライフス タイル定点調査の2010年のメインテーマは、「ソー シャルメディア利用実態」となっている。  新時代に入ったインターネットライフを俯瞰し ながら、マーケティング活動の一助となることを 願っている。

(小林晃/池添久美子)

本号掲載の弊社データの概要

※本提言「日本型マーケティング3.0」は、「営業力開発」誌 2010年・No209号(編集発行:日本マーケティング研究所 執筆担当:JMRサイエンス)へ掲載されています。
尚、誌面では以下の様な構成です。

「日本型マーケティング3.0」

T.21世紀型マーケティング
U.変革し続けるインターネットの世界
V.ソーシャルメディアのユーザースタイル
W.生活者の消費動向
X.経年でみる買物意識変化
Y.ネットスーパーの時代
Z.ここ1年の生活意識の変化
[.マーケティング3.0を求めて


 
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